隣人物語 | man-p-crewさんのブログ

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僕のシャチホコですけど大丈夫ですか?
衝撃は受け流せるから大丈夫。


今思い出しても恐怖が蘇る。




これに書くべきかどうか迷ったが覚悟を決めることにした。




それは社会人になりたての頃のことである。







一人暮らし自体は学生時代からなので苦はなかった。




だが、社会人は当然ながら初めてである。




まだ慣れない社会人生活。




仕事にも人間関係にも苦難の連続だった。






いつもより増して静寂が包み込むようなある日の夜。




ただでさえ淋しいのに静かな闇夜がさらに淋しくさせた。



漆黒のキャンバスを見上げると僕の気分とは裏腹に淡く優しく輝く上弦の月。



その光が僕の弱った心に力を与えてくれるようだった。



いつもどおりの時間に帰宅。



特に何も変わらず前日と同じ流れでカバンをベッドの脇に置き上着をハンガーに掛ける。



ため息と共に座り込み、テレビをつけようとしたその瞬間。



時どこからともなく物音が聞こえてきた。




当然家の中は自分だけ。


鍵も締めている。






奇妙な感覚に囚われる。





背中につたう粘着質のある汗。





グっと握り締めた拳。




室内に響きわたるかのごとく高鳴る鼓動。




つばを呑み込む。



自然と室内に対して警戒心を強める。



誰かがいるのか?





もしかしたら自分が帰ってくる前に空き巣が入ってきていてまだ潜んでいたのか?



様々な憶測が脳内を飛び交う。



とにかく室内を見渡す。



クローゼットの中を見る。



自分の服がいつもと変わらず乱雑に置かれている。




ベッドの下を見る。



何もない。




キッチンの方に向かう。


誰もいない。



風呂場もトイレもいない。




ただの気のせいだ。



そう自分に言い聞かせ室内に戻ってきた。





まさにその時である。













続く。