前回の記事で触れた「左頸部の腫脹」だが、休薬していたイブランスを以前と同じ「3週投与・1週休薬」に戻すと、たちまち腫れと痛みが引いた。
痛みがなくなってしまうと、あの時どれだけひどい状態だったのかもあっという間に忘れてしまう。

前回の診察で教授先生は、奇跡的に7年以上効果のあったイブランスも、さすがに抗腫瘍効果が十分ではなくなってきていると考え、次の治療のためにもう一度左頸部リンパ節摘出術を勧めてきた。
渋る僕を見て、100回に1回くらいは良いことを言う妻が、
「イブランスの服用を通常スケジュールに戻してから判断しては?」
と助け船を出し、なんと教授先生もその提案に同意した。
あの時はあっぱれな妻だったが、だいたいいつもは頓珍漢なことを言っている。
ともかく、今回の診察では、
「腫れと痛みは引きました!手術はなしでいいですよね?」と、ドヤ顔で言いたかったのだが・・・。

今日は3回教授先生に怒られた。

診察予定時間は11時だった。
僕は採血のあと、駐車場に停めた車の中で座席を倒し、診察予定時間を待っているのが常だ。
11時といってもだいたいは遅れて12時前に呼ばれるのが普通なので、11時10分前くらいに車を出た。
10分前に出ても待合室には十分着ける時間だったが、駐車場の事前精算機を見てふっと思い出した。
この病院では事前精算機に駐車券と診察券を入れると割引されるシステムなのだが、前回、前々回と診察券を入れた時にエラーが出て駐車場の係員さんを呼ぶはめになった。
どうやら磁気に問題があるらしく、「リライトしてもらってください」……と言われたことを思い出した。
病院の玄関を入った右手に窓口がある。ひどく並んでいたので一瞬迷ったが、「どうせ早く待合室に行っても、まだまだ待つだろう」と考えた。
これが間違いだった。

7分ほど並んで診察券を再発行してもらい待合室に向かうと、僕の番号が大型モニターの中で点滅していた。
「おっと、ナイスタイミング!」と意気揚々と教授先生の診察室に向かおうとすると、診療科の受付の女性に「2、3回呼ばれてましたよ」と言われ、「しまった!」と顔が青ざめた。
慌てて駆けつけてノックして診察室に入ると、案の定機嫌の悪い教授先生がそこにいた。
僕には目も合わせず、
「待合室にいてもヒマなんだろうけどさ、近くにいてよ。何回か呼んだんだぞ!」
と。
この件で怒られるのは過去に2回ほどあって、懲りもせずまたやらかしてしまったというわけだ。
これが1回目。


1週間前に撮った造影CTの結果だが、左頸部以外の転移巣には、特に変化はないとのことだった。しかし、やはり左頸部のリンパ節は過去画像と比べると素人が見ても徐々に大きくなっているのが分かる。
「前回と今回とでは読影の先生は変化なしと言っていたけど、大きくなってるように見えるだろ。」
ま、そう言われれば過去画像では丸い形だったのが、今回のCTではアメーバのような形になって面積が広くなっているように見えた。
「だけど、腫れと痛みが治まったということなので、治療は変えないことにする。首だけのことで抗がん剤やってゲロゲロしたくないだろ?」
そりゃもう、ゲロゲロもハゲるのも嫌です。
摘出手術のこともこれで立ち消えになり、また退屈なブログに戻るのかなーなんて思っていたら、まだ話の続きがあった。
「ただな、白血球の数値が悪いんだよ。これじゃ、今日はイブランスは渡せないな。1週間の休薬期間で白血球が戻らないとなると、2投2休を考えたいと思っている。次は1か月後じゃなくて3週間後になるけど、病院に来れるか?その時の採血の結果を見て判断しようと思う。」

いやな気がした。
慌ててスマホのカレンダーを確認すると、なんとまあ、東京へ歌舞伎を見に行く予定を入れてしまっていた。新幹線やホテルはキャンセルできても、歌舞伎のチケットはもう送られてきてキャンセルはできない。
恐る恐る教授先生に「その日は東京に行く予定を入れてしまっていて……」と言うと、2回目の小言が始まった。
「その日が無理だったら翌週は祝日だからその次の週になるぞ。予定は変えられないの?もう今度からオレの診察がある火曜日に予定を入れないでくれよ」
と、頭からうっすら湯気のようなものが見えた。
「じゃ、来週は?」

またいやな気がした。
慌ててスマホのカレンダーをもう一度確認すると、違う病院の診察予定が入っている。
思わず「うーん」と唸る。教授先生の頭から、沸騰寸前のヤカンのふたみたいにカチカチという音が聞こえてきた。
「大丈夫っす!」と答える前に、教授先生はもうすでに来週の予定を打ち込んでおられた。
だからまぁ、3回目は怒られ未遂だったかな。


そんなわけで、薬もなく注射もなく、今日はあっさりと病院を出ることになった。
ま、面白おかしく書いたけど、早く帰れるのと大嫌いな注射がなくなった嬉しさより、注射も薬もないとなるとかえって不安になる。
それにこれからイブランスが2投2休になるかもって?
お薬は決められた用法・用量で服用するのが基本なのは、僕だって知っている。
本来イブランスは125mgを3週投与・1週休薬で服用するお薬だが、僕は数年前に発熱が続いたことで100mgに減薬になっている。
さらにこれを2投2休にするとなると、がんがまた大きくなってくるのではと心配になる。
あとでチャッピーに聞いてみると、イブランスの通常の投与スケジュールは3週投与・1週休薬で、「2週投与・2週休薬」は添付文書に記載された標準的な投与スケジュールではないという。
教授先生は、イブランスによる抗腫瘍効果と骨髄抑制を天秤にかけて、2投2休という選択肢を考えたのだろう。
こういう判断ができるというのはやっぱり教授先生だからだと思う。
しかしまぁ、100mgに減量して1週間の休薬期間を置いても、以前のようには血球が戻らなくなってきたということなんだろうか。
7年以上も飲み続けてきた薬だ。いろいろ考えてしまう。


あとでチャッピーに今回と前回の血液検査を比較してもらった。
特に指摘されたのは、好中球が1,650から1,080へ、血小板が9.7万から8.7万へ下がっていることだった。
つまり、検査結果が何もかも悪かったというより、イブランスによる骨髄抑制からの回復が追いつかなくなっている可能性がある、ということらしい。教授先生が「2投2休」を考え始めた理由も、そう考えると理解できる。

先週はCT撮影、そして今日の診察、また来週の診察……と、このところ毎週病院に行っているな。
加えて白内障の術後フォローが1か月に1回、生活習慣病管理が1か月に1回。
また、このところ右腕の三角筋の外側と親指に痛みとしびれが走るようになり、これで整形外科に通っている。
来週はMRIを撮る予定になっている。
確定診断はMRIの結果を見てのことだが、恐らく……頸椎のどこかで神経が圧迫されているのだろう。
とりあえず痛みを何とかしたくて、「痛み止めをください」と言うと、後頭部と首の境目への注射を提案された。
後頭神経ブロックという注射でリドカインとデカドロンが入っているらしいが、まあビビりの僕が後頭部と首の境目に注射を打つことになっても動揺しなくなったっていうのは、自分でもびっくりするほどの進歩だ。
先生の周りの看護師さんまで僕の周りに集まってきて、注射の様子を凝視している。そんなに珍しいのか?
お尻の筋肉注射にしろ、今回の後頭神経ブロックにしても、自分から見えないので平気と言えば平気だ。
反面、毎回の採血の時は自分の腕に注射針が入っていくところは見たくないので顔を背けているのだが、ってことはやっぱりビビりの僕は健在なのだろう。



ということで……。
来週火曜日の診察、血液検査の結果がどうなっているか……乞うご期待?