以前の記事に書いたように、新型コロナウイルスのワクチン接種はかかりつけの病院で予約したものの、在庫不足によって強制的にキャンセルさせられてしまった。
しかし妻が予約していた病院では、接種日を前倒しにすることでキャンセルを免れることができ、ついでに僕の分も予約することができて、7/14、無事に1回目の接種を終えることができた。

癌が分かってから今日まで何百回と注射を打ってきた僕だが、注射には慣れることがない。
元々僕は大の注射嫌いで、小学校低学年の頃の集団予防接種では必ず2,3人の先生に押さえつけられながら注射されたものだった。
高学年になると悪知恵が働き、予診票に「卵を食べてアレルギーが出たことがある」のところに○をすると注射しなくてもいいことが分かり、以後、学生時代はずっと注射を逃れてきた。
風邪を引いても絶対に病院に行かなかったし、「点滴する」・・・なんて言われた時には「こ、この後用事が・・・。」と尻尾を巻いて逃げたことだってある。
社会人になると1年に一度の健康診断に採血があったが、若かりし頃は用事を作って逃げまわっていた。
しかし総務部から未受診をこっぴどく怒られてからは、仕方なく受けるようになったけど、穿刺のことを考えると1週間前から憂鬱だったのだ。
こんな僕が注射に慣れるわけがない。

中でもやっぱり筋肉注射がいやだった。
ある時、人間ドックの胃透視の前処置で肩に筋注されたことがある・・・前触れもなく。
さすがにこの歳で駄々をこねるわけにもいかず、大人しく注射されたけど、心の中で何回「聞いてねーよー」とつぶやいたことか。
確か胃腸の働きを抑えるブスコバンって薬だったな。
それ以来胃透視の検査はパスしている。
そんな僕が、フェソロデックスという中殿筋への筋注を1ヶ月に1回、2発打たれているというのがどれほど苦痛か、筆舌に尽くし難い。

こんな僕なので、新型コロナウイルスのワクチン接種が筋肉注射だと分かってからはずっと憂鬱だったのだが、任意とは言え、こればっかりは避けて通るわけにはいかない。
(こんな注射、フェソロデックスに比べれば何ともないわ)と自分に言い聞かせ、予約した小さな病院を訪れた。

受付で接種券と予診票を出し、混雑する待合室で待っていると、5分もしないうちにコールがあった。
先生は予診票を見て、「カルチ?どこの?」と聞いてきた。
僕はアナムネ(既往歴)を書く時、いつも「がん」とは書かずにカルチと書いている。
ちなみに乳がんだと「マンマカルチ」というのだが、今日はそこまで書かなくてもいいだろうと、カルチとだけ書いていたのだ。
この病気になって6年が経つが、いまだに乳がんと言うのが気恥ずかしいのだ・・・ま、昔ほどではないけどね。

そういえば男性の医師に注射を打ってもらうのは久しぶりかもしれない。
過去の経験から言えば、男性医師が打つ注射は迷いがなく、遠慮がなく、狙ったところに注射針が根元までズバッと突き刺さった感じがした。
今日の医師もそうで、注射針が深々と三角筋に突き刺さり、右手の指先まで少し痺れを感じるほどだった。
筋肉注射で、薬液の痛みではなく、筋肉そのものに痛みを感じたのは初めてだったかもしれない。
毎月のフェソロデックス筋注は女性の看護師さんが中殿筋に打ってくれるけど、僕のケツがでかいのかも知れないが、
(これ、ホントに筋肉に刺さってる?皮下注射になってない?)
なんて心配するほど優しく打たれることもある。
今日の注射は2回目の接種がイヤになるほど痛かったし、2日経った今でも穿刺の跡がしくしく痛む。

穿刺のあとは15分のタイマーを渡され、さっきの待合室でしばらく休憩し、2回目の接種を予約してから帰路についた。
少々気だるい感じがするのはこの副作用ではないだろう。
微熱やら頭痛などもなく、これで安心するわけではないけど、ようやく新型コロナウイルスのワクチンを打つことができてほっとした。

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僕の弟は東京在住だが、夫婦そろってワクチンは打たない選択をするようだ。
打つ、打たないは個人の自由だけど、専門家でもないズブの素人がどこで拾ってきた情報なのかワクチン陰謀論みたいなのを信じ、誤った判断を下すところが我が弟ながらバカだと思う。

まだ「筋肉注射が怖い」と言ってくれたほうが、納得しやすい。
僕がマンマカルチになってからと言うもの、エビデンスのない様々な治療法を目にしてきたし、これに踊らされてふらふらと一貫性のないことをして残念な結果になった人も知るようになった。
他人がどんな治療をしようと勝手だが、自分の体験談をさも万人に効くようなことを吹聴し、もったいないことにお金を使わせているのを聞いたりして、ずっと腹ただしく思ってきたのだ。
そんな想いが、我が弟にも重なって見えたのだろう。
今からでも遅くはない。
我が弟だけの話ではないが、正しい情報を元に、正しい判断を下してくれるよう望みたい。
いつまでも新型コロナウイルスに怯えなくてもいい日が来るように。。。