これまでの記事でも何度か触れたが、今年で術後5年を迎えた。
ステージⅣである僕のこれから先の生存率は低くなる一方なので、会社と相談してこの4月からがらっと仕事の内容を変えてもらった。
一言で言えば、いつ僕がいなくなっても困らない部署を僕のために作ってもらったのだ。
もう治らないがん患者に対しては冷たい会社があると聞く中で、こういった配慮は本当にありがたい。
だから我がままなんて言える立場ではないのだが、僕がこれまでボスとして仕切ってきたシマの隣に僕の席があるのはあまりにも辛すぎる。
かつて僕が座っていた席には後任の課長が座り、僕のかつての部下を意のままに操っている。
これまで僕のところへ相談に来ていた同僚は僕を素通りして後任の課長の元へ出向き、僕宛ての電話は携帯電話も含めて一切鳴らなくなった。
かつての部下がこれまで付き合いのあった100を超える協力会社の担当者に、ことあるごとに、
「たいちは部署異動になった・・・」
と言っているのを聞くと、僕はもうどんな顔していいのか分からない。
みんなが僕を無視しているような気がして、「おはようございます」「お先に失礼します」という言葉以外、僕は会社に来てから言葉を発することがなくなった。
辛い・・・寂しい・・・。
テレビドラマの「ノーサイドゲーム」を見ているが、第9話の最後で主人公である君嶋(大泉洋)が、「生きていくのは辛いなぁ」・・・とボロボロ涙を流しているのを見て、僕は不覚にも声をあげて泣いた。
「一番信じていた人が一番の敵だった」
・・・そう、後任の課長は僕の大の親友だったのだ。
彼は敵ではないけど、僕が退いたことで僕よりもいい成績をあげようと、今、必死になっている。
そんな環境の中ではあったが、新しい仕事にもようやく慣れてきて「また頑張ってみようかな」という意欲も少しづつ湧いてきた。
新しい仕事に必要な勉強をしている中で、こんな資格を取りに行こうか・・・と考えてハッとした。
いついなくなるか分からない僕に、会社が受験料を出すわけがない。
僕がハンコを押す立場でも、きっと否決するだろう。
悲しいけどこれ、現実なのよね。。。
僕はもう昇格しないし、昇給だって高額療養費の関係で凍結してもらっている。
僕は野心家ではなかったつもりだったが、評価がないということがこれほど働く意欲を失わせるものだとは知らなかった。
今の僕にとっての会社は、毎月決まったものをいただくために存在している。
会社が僕に大きな仕事を任せられないと考えている以上、出過ぎず目立たず、そしてお荷物にならないようひたすら首を引っ込めておくのが一番なのだ。
悲しいけどこれ、現実なのよね。。。