先日、テレビのニュースを見ていると、XPで肺がんを見落とされ、検査時はステージ1だったのに発見時にはステージ3にまで進行していたとして、70代の男性が検査をしたクリニックに、1,600万円の損害賠償を求めて提訴したというニュースを目にした。
医療機関が検査時に癌を見落とすのって珍しいニュースではなく、残念ながら時々耳にする。
癌は発見が早ければ助かる可能性が大きいだけに、見落とされて命の危険を考えなければならないところまで進行してしまった患者さんは、怒り心頭だろう。
でも癌患者からみれば・・・。
訴えられたクリニックが怠慢ではなく、マニュアルにのっとった結果の見落としであればそのクリニックは本当にお気の毒だと思う。
肺がんをXPで発見するのは難しいというのはもはや医学界の常識で、医師でなくとも勉強好きのがん患者なら容易に理解できるのではないだろうか。
僕がこの病気になってからというもの、再発の早期発見のためにXPを撮ったことは一度もなく、全部CTだった。
XPを撮ったのは、定期健康診断の時くらいだ。
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<日本肺癌学会>
最初に行うべき検査は胸部X線で,肺癌の検出感度は60〜80%程度と報告されている。
胸部X線で異常がある場合は,胸部CTを行う。
胸部CTは,肺癌を検出する形態診断法として,現時点で最も有力な検査である。
肺癌の検出感度93.3〜94.4%,特異度72.6〜73.4%であり,胸部X線(検出感度59.6〜73.5%,特異度91.3〜94.1%)よりも有用である。
特に,早期肺癌においては,CT検査が最も有用である。
<徳洲会グループ>
胸部X線(レントゲン)検査では、心臓・肝臓・大血管の陰に隠れた部分の肺に出来た肺がんは発見困難です。
しかも、そこは或る種の危険な肺がんが出来やすい好発部位なのです。
胸部X線では、約30%の肺がんが見落とされる、そして2㎝未満の早期肺がんは約79%が見落とされる、という報告があります。
そこで、肺を5mm刻みに輪切りにして映し出す肺CT検査がお勧めです。
肺CT検査による肺がん発見率は胸部X線の8倍、そして2㎝未満の早期肺がん発見率は5倍、という報告もあります。
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とはいえ、CTは検査料金も高く、被ばく線量もXPより多く、そして検査時間も長いことから、日本肺癌学会も胸部XPが最初に行うべき検査であるとしているのはやむを得ないところかもしれない。
僕がこの病気になる前、医者嫌いの僕はほとんど病院に行かなかったし、また医療に対する知識もなかったので、医者が「病気を見落とす」なんてことを真剣に考えたことがなかった。
今から考えれば、よく男である僕に、的確に「乳がん」の診断をつけてくれたものだと、一番最初の主治医・・・いやその前の内科医には感謝でいっぱいだ。
この時のことは過去記事にも書いたが、少しおさらいすると・・・。
○ 高血圧の治療で通っていた内科医に、左乳にできたしこりを相談。
↓
○ 乳腺外科を紹介され、予約をねじこんでくれる
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○ 乳エコーで検査するが、はっきりしないのでABC施行
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○ クラス3(いいとも悪いとも言えないという結果)。
クラス1、2なら経過観察だが、3ならはっきりさせた方がいいと判断される。
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○ CNB施行
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○ 乳がんであることが確定
↓
○ 一番最初の内科医にお礼を言うと、「まじで乳がんだったの?」と驚かれる(笑)
女性ならまだしも、男なので「乳腺炎」だとか、「しばらくほっといたら治るよ」と、ほったらかしにされていてもおかしくないところで、僕自身ネットであれこれ調べてみても乳がんだとは思わず、乳首からばい菌が入ったのだろうと思っていたのだから。
折角早く見つけてもらったのだけど、残念ながら、
(術前)ステージⅡ
(術後)ステージⅢa
(再評価)術前から縦郭リンパ節が腫大しており、術後ケモで消失した(らしい)ことが、1年後に判明。
つまり最初からステージⅣだった可能性があった。
…という結果だった。
正直、術前に縦郭リンパ節が腫大していることを分かっていながら、これを放置したのは主治医の怠慢だと今でも思っているが、そのおかげでステージⅣならできなかった手術や放射線といった治療ができたので、結果的には怪我の功名というべきかもしれない。
少し話は変わるが、たらい回し?誤診?なんと言うのか分からないが、後頭部の「できもの」の場合は、それがなんなのかが分かるまでに相当な時間を要した。
皮膚科①・・・粉瘤という良性腫瘍。(但し、皮膚にできたしこりは悪性の可能性あり。)
皮膚科②・・・形は変わっているが、生検するまでもなく粉瘤。
脳神経外科・・・所見なし。誰にでもある骨の出っ張りだ。
整形外科・・・MRIをとったが、嚢胞にしては深すぎるし生検しないと分からない。
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結果・・・現在の血液腫瘍内科で検査したPET-CTで転移巣だと判明。
初発ではなく再発だったので大騒ぎにはならなかったが、おかしいなと思ってからはっきりするまでに1年半もかかったのだ。
発見当時はすでに3センチ以上の大きさがあったので、これが初発だったらと思うとぞっとする。
皮膚科①、皮膚科②、脳神経外科は町医者で、整形外科は大学病院だった。
何人もの医師に診てもらってもこういう結果だったのだ。
町医者は検査設備もないから仕方がないと思うが、結局は紹介状を書いてそれで終わり。
最初から検査設備のある大きな病院で診てもらえばよかったと思うが、随分遠回りをしてしまった。
正確な診断(現状把握)を付けてもらうには、医者の技量や検査ツールーに依るところが大きく、患者の身分から言わせてもらえば、まだまだ「運任せ」という言葉を使わざるを得ない。
僕の乳がんが早期に確定したのは運が良かったからであり、後頭部の皮下腫瘍が分からなかったのは運が悪かったのだろう。