僕は食事療法には懐疑的だ。
癌になりにくくするために食生活を見直すと言うのならともかく、一旦癌になった者が食事で治ったり再発を免れたりなんてことは全く信じていない。
癌ってそんなに甘いものではないのだ。

そんな僕が、この病気になってからすぐに食生活を見直した。
このブログを初期のころから読んでいただいている読者はもうご存知だろうけど、医者が施す受け身の治療以外に、自分でも積極的に再発防止のために動いてみたい・・・そう考えたからである。
だから、心の拠り所を食生活に置いただけで、その実効性については全く信じていない。


僕は癌になる前から憧れていた食生活があったのだけど、食生活を見直すには、特に妻の全面的な協力が必要になる。
今回、癌になったということを建前にして、僕が理想とする食生活を強力に推し進めて実践してみたのであった。

自分なりに勉強し、たどり着いたのがマクロビオティックを基調にした自分なりのルール。
つまり・・・。
○ 牛・豚・鶏肉は食べない。(出汁として溶け込んでいるものは除く。)
○ 精製されたものは食べない。(白米、白砂糖、小麦粉・・・等。但し、精製されていないものなら、玄米、黒砂糖、全粒粉などはOK。)
○ 乳製品は食べない。(パン、ヨーグルト、チーズ、バター等)

2014年の初発の手術以来、再発が分かるまでこういうことを結構厳格に実践してきたが、特に「頑張った!」という思いはない。
食べ物の強烈な誘惑もなく、不思議と自然にできてしまったのだ。
ただ、外食では食べられるものが限られてしまうので、これが結構困った。
妻も限られた食材で食事を作らないといけないのでもっと困っていたと思うし、自分の食べたいものが食べられないので、不満もあったことだろう。
会社の飲み会では僕に気を使って、いつも海鮮居酒屋だった。(飲み会と言っても、僕はお酒もやめちゃったのでいつもウーロン茶だけどね。)

そんな僕も、再発が分かってからもはや食事制限をしている意味が分からなくなってしまい、とりあえず数ヶ月前に鶏肉を解禁した。
「うん、今晩からそういうわけで食べることにするよ」

と妻に宣言し、その日の夕食は二人で焼き鳥屋さんに行った。
鶏肉を解禁しただけで食のバリエーションは大きく広がって外食の時も困らなくなり、会社の飲み会は焼き鳥屋さんという選択肢が増えて同僚や部下は喜んでいた。

それから後、チャーハンに入っている小さなお肉を取り除いたりすることがなくなり、パンを食べることも少しづつ増えていった。

精製されていないものを・・・というこだわりもなくなっていった。

「ま、もういっか」と。
妻はそんな僕をそっと観察していたのだろう、先日冷蔵庫の中にチーズが入っているのを発見した。
これではもう食事制限をしている・・・とは言えない。

僕が再発していなければひょっとしたらまだ厳格に続けていたかもしれないが、これだけ癌が体中に広がってしまった今、僕はもはや長生きすることを諦めてしまった。
ステージⅣのがん患者っていうのは、食事制限を考えるよりも、むしろ食べれるときにおいしいものをどんどん食べなければいけない段階にきたってことだろう。

もちろん、再発したからと言ってやけくそになるわけじゃない。
タバコや酒を再開するつもりもないし、
それに鶏肉は解禁したけど、牛肉と豚肉だけはどうも体質的に合わなくなってしまったのかこれから先も食べる気がしない。

どうも独特の臭みが気になって仕方がないのだ。
いい肉ならそうでもないかもしれないが、そこまでして食べようとは思わない。

これまでの過去記事で偉そうに食のことを語ってきただけに、食生活を元に戻すのならきちんと幕引きをしなくちゃいけない。
そう思ってこの記事を書いた。
というわけで、私、「本日をもって、食事制限をやめました」