アブラキサンと思われる副作用で爪床剥離を経験し、それはそれで辛い経験をした。
まもなくアブラキサンの最終投与から1年が経過するが、爪床剥離は正常な爪が伸びてきて徐々に解消してきたが、それでも爪がもろくなって容易に欠けやすくなっているのはなかなか治らない。
やすりで削っても削ってもギザギザが治らず、服の繊維をひっかけまくっている。
それと陥入爪だ。
僕は病気をする前は爪で悩まされたことはないので、これは明らかにケモの副作用と言えるのだが、正常な爪が伸びてくる過程で、もろい爪が歪んで皮膚に食い込んでいるのではないかと自分なりに推測している。
程度の差はあれ、陥入爪になっている指は、以下のとおりだ。
○ 左手・・・親指、薬指
○ 左足・・・親指の両サイド
○ 右足・・・親指の左サイド
そのうち、左足と右足の親指については、前の病院の皮膚科でサイドの爪を切ってもらって軽快した。
なかなか慎重な皮膚科医で、ケモ中の陥入爪は切っても無駄だと全く切ってくれなかったのだが、主治医やがん化学療法認定看護師、セカオピの先生などから散々意見してもらってようやく切ってくれた。
しかし、喜んだのも束の間。
今度は左足親指に、切ったほうとは反対側に陥入爪が現れたのだ。
前回切ってくれたのだから今度はつべこべ言わずに切ってもらえるだろうと同じ皮膚科医を受診したのだが、またもや「切りたくない」と言い出し、次回の予約も入れずに終診にしてしまいやがった。
毎日絆創膏を張り替えているが、膿出はひどくなるばかり。
普通に歩く分には問題ないが、ちょっとした坂道を登ったり、早歩きをする時のように親指で地面をキックするような場面では痛くてうまく歩けない。
ちょうど予定していた全てのハーセプチン投与が終わり、新しいクリニックへ転院するタイミングでもあったので、調べてみるとクリニックでも陥入爪の手術実績もあり、新しいクリニックの先生にかけてみることにした。
2016.1.12
本日は2回目のクリニック訪問だ。
前回は紹介状を持参してのご挨拶程度だったが、今日は処置の予約をいれてもらっている。
今日の目的は・・・
○ タモキシフェンの処方
○ ポートのヘパリンロック
○ 陥入爪の手術
だ。
クリニックの自動扉が開くと大混雑していた前回とは違い、待合室には二人の女性患者しか座っていなかった。
今日は手術日なので、予約患者しかいないからだろう。
診察券を出そうにも事務員すらいない。
しばらくするとコードレスフォンを持って通話しながら事務員らしき女性が現れたので、電話が終わるのを待って、彼女の前に診察券と予約票を置いた。
事務員だと思っていた女性は、実は先生の奥様だった。
名前を呼ばれるまでの間に少しだけ雑談を交わしたが、この季節・・・2月までは検診のピークでどの時間帯に来られても2~3時間待ってもらっているとのことで、芸能人の北斗さんの影響も大きいのだという。
大病院の乳腺外来では乳がん検診を断っているところもあると聞くので、そのしわ寄せがこういったクリニックにくるのだろうと思った。
しばらくすると、処置室から看護師さんが顔を出して、僕の名前を呼んだ。
ヘタレで申し訳ないが、デパスを1錠口に含んでから処置室へ向かう。
まず右鎖骨下のCVポートのフラッシュから始めるようだ。
前回書いたように、このクリニックではヘパリンの準備がなかったので、わざわざ取り寄せてくださったようだ。
先生が僕の患者カードをもういちど確認し、薬を調合する。
処置室のベッドに横になって服をたくしあげると、シリンジで僕のポートに穿刺し、ヘパリンロックをしてもらった。
今まではヒューバー針で、シリンジでの穿刺は初めてだったが、わずかにチクッとした痛みが大きいように感じた。
そしていよいよ抜爪だ。
先生が準備をしている間、前回手術をしたときになかなか出血が止まらなかったことをお話しすると、準備が終わった先生がなぜかパソコンの周りをぐるぐると歩きだし、うろたえているように見えた。
「ヘパリンを入れちゃったからなぁ・・・」
とぼそぼそつぶやくのを聞いて、僕もはっと気が付いた。
「そっか、余計に血が止まりにくくなりますね。」
というと、そのとおりと言わんばかりに大きくうなづく。
しかし、こういった経験はなんどもしてきたから、やってみますか・・・という先生の言葉に、前日から覚悟を決めてきた僕も大きくうなづき返した。
「前の病院では局所麻酔はどこに打ったの?」
と聞かれたので、爪の上部に1か所打たれましたと答えると、なぜか少し苦笑気味に、
「僕は爪の根元2か所に打ってブロック麻酔するからね」
と仰った。
違いはよく分からないが、先生にお任せするしかない。
ベッドに横たわるように言われたので、麻酔注射の後はどんな処置をしてもらったか分からないが、体を起こした時にはもうすでに包帯が巻かれた後だった。
痛みは・・・そりゃもう、局麻も痛いし抜爪の瞬間も痛いし、できればもう2度と体験したくない。(と毎回思うが、これで3度目になる。)
そばの膿盆には僕の左足親指に食いこんだ、抜かれたばかりの長細い爪が置いてあった。
前の病院の皮膚科医はサイドを斜めに切っただけだったが、今回は爪母までまっすぐ切ってくれたようだ。
やり方の違いで比較してはいけないのかもしれないが、印象としては今回の先生のほうがきちっと処置してくれたように思う。
包帯は今週土曜日までそのままにしておくようにと言われているので傷口の確認はできないが、二日たった今でもまだ手術の後が痛んでいる。
しかし・・・クリニックを出た僕の足取りは軽かった。
とにかく、これでもうすっきりした!