ビビりの僕のことだから当然検査前の、「縦隔リンパ節生検」という検査がなんたるものかの予習は欠かさない。
呼吸器科で「気管支鏡ファイバースコープ」による検査を選択した僕は、またもやネットを駆使してこの未知なる検査について検索を重ねた。
「呼吸器内科では1、2位を争うほど苦しい検査で、米粒一粒が気管に入った苦しみを経験したことがあるなら、鉛筆大のスコープが気管に入っていく苦しさは想像できるでしょう?」
と、呼吸器内科の先生に脅かされた僕の検索ワードは、ずばり「気管支鏡検査 苦しい」だった。
すると、たくさんの経験者のブログがヒットし、やっぱりたいていのブログは一様に
「苦しい、痛かった、二度とやりたくない検査」
とネガティブな表現で語られていた。
※ 「苦しい」というワードで検索したのだから、苦しかった人のブログがヒットするのは当然のことなのだが。
縦隔リンパ節生検は、通常原発が「肺がん」でリンパ節に転移が疑われる時に検査することが多いようで、ヒットしたブログも肺がんの方のものが多かった。
乳がんでも縦隔リンパ節に転移したという方がいないわけではなかったが、検査の模様を詳しく書いたものは見つけることができなかったので、後に続く方のために2017年度版「縦隔リンパ節生検」についてご報告したいと思う。
ネットで事前に調べてびびったことは二つ。
① 肩に打つ筋肉注射
「また注射でびびるのかよ」
と思われるかもしれないが、筋肉注射は初めて経験する。
呼吸器内科で鎮静剤の使用の有無について聞かれたが、半分眠っているような意識朦朧とした状態のままで終わる人もいる・・・と説明されたので、それが筋注とは知らなかった僕は「是非とも」とお願いしたのだが、筋注と聞いて複雑な気持ちになってきた。
唾液、痰などの分泌物を減らす薬と鎮静剤を三角筋に打つらしいのだが、注射慣れしてきた僕でもほぼ直角に穿刺されるというのは恐怖だ。
特に筋肉にはなかなか薬液が浸透しないし、針もそこそこの太さのものを使うらしいのでそれが痛みの原因になるらしい。
② プールで溺れるような息苦しさ
胃カメラは以前に経鼻で経験したことがあるのだが、経口での内視鏡検査は初めてだ。
経験者のブログでは「窒息死するー!」というほど息苦しかったというのを読んだが、これが二つ目の恐怖だ。
しかし同じブログに楽に済ませるコツも載っていて、要は「鼻から吸って鼻から吐く」ということを忘れるなということと、前処置の喉への麻酔をむせてもしっかり吸い込んで効かせておくこととあった。
2016.1.10
僕の検査予定は午前9時30分からで、午前9時には来院して受付を済ませておくよう指示されていた。
前夜21時から絶飲食の指示を受けていたのをすっかり忘れていて、えべっさん(宵えびす)にお参りに行った帰りに食事をしたのが21:30頃だった。
早速やらかしてしまったのだが、30分程度食事が遅れたくらいなら問題ないだろうと勝手に判断し、申告もせずに検査を受けることにした。
検査当日はいつも飲んでいる抗不安薬であるメイラックスに加え、頓服のデパスも飲み、時間とともに高ぶってくる不安感を必死に押さえ込む。
自宅からタクシーで1メーターの距離にある大学病院で、微妙な距離にあるだけについついタクシーを使ってしまうのだが今日もまたタクシーに乗ってきてしまった。
気管支鏡検査は、内視鏡検査(胃や大腸)部門を集めた光学医療診療室で行う。
光学医療診療室は、ちょうど僕の教授先生がいる血液腫瘍内科の斜向かいになる。
受付で診察券を見せると、
「血圧を計って待合室で名前を呼ばれるまで待て」
というので大きな待合室15分ほど待っていると、ナースが僕を呼びにきた。
ナースと共に廊下をまっすぐ30mほど進むと右手に「検査室」「透過室」と書かれた部屋をいくつかやり過ごし、一番奥にある検査室へと案内される。
中は患者が横になる検査台と、その周りにモニター類が3、4台配置されていた。
そして数名の医師やら技師やら看護師さんなどが慌ただしく準備を進めており、なんだか2年前の摘出手術の直前の手術室を思い出してしまった。
もちろんこの検査室は手術室より随分狭いけど。
「薬液が飛び散る可能性があるので・・・」
と上衣は下着1枚になり、その上から病院の検査衣を羽織らされて持ち物は全て透明のビニール袋に入れさせられた。
そして検査台に腰を下ろすと最初に「アネトカインビスカス」というどろっとした口腔内麻酔を4分間含まされ、その後差し出された膿盆に吐き出した。
飲み込んでも害はないとのことだったが、うっかりするとホントにゴクリと飲み込んでしまいそうになるので意識を敢えて逸らすように努力した。
続いて他のブログでは「むせまくった」と評判の悪かった霧吹きに入った「キシロカイン」の喉への噴霧である。
ここでしっかり麻酔を吸い込まねば後が苦しくなるんだと、気合いを入れ直す。
技師さんの「吸ってー、吐いてー」の言葉に呼吸を合わせると、「吸って―」の時に霧吹きを口の中に吹き込まれるのだが、ブログで読んでいたほど激しくむせることもなく、薬液もくそまずくもそんなに苦くもなかった。(もちろんおいしいものでもないけどね。)
3回ほど噴霧すると口の中にたまった薬液を膿盆に吐き出させてくれる。
これを4~5回繰り返すと喉の奥のほうが麻痺したような感覚になってきたが、どこかのブログで読んだ「コンクリートのようにカチカチになった」という感じではなかった。
そして検査台の上に横になるようになるように言われたので、靴を脱いで検査台に横たわると頭の位置を調整し、左足首に自動血圧計をつけられ、胸と左腹部にバイタルモニター用の端子を貼りつけられる。
右腕に鎮静剤(ドルミカム)を入れるためのルートを取られ、指には酸素飽和度モニターを装着し、室内に「プッ、プッ、プッ、プッ」っと僕の脈音の電子音が響く。
これも薬液が飛ぶからと、目の上に保護用のガーゼを置かれたので視界は完全に遮られてしまったが、雰囲気は全く手術と同じだ。
僕が最大に恐れていた筋肉注射はいつするのだろうかと落ち着かなかったが、どうやらこの病院では打たないようでそれには心から安堵した。
そして医師?(視界がないので分からない)の、
「それでは始めていきます」
という声と、周囲の
「よろしくお願いします」
という声が聞こえ、いよいよ「超音波気管支鏡下穿刺吸引生検」(EBUS-TBNA<イーバス-ティービーエヌエー>)が始まった。
<東京女子医科大学のHPから抜粋>