ネットニュースで、元祖アイドルアナと呼ばれた有賀さつきさんがお亡くなりになったことを知った。
死因は本人の希望で明らかにされていないが、こぼれ聞こえてくる「激やせ」「かつら着用」のワードは、癌患者でなくともピンときたのではないだろうか。
産経新聞では「乳がんとみられる」と、死因にまで踏み込んだ報道があった。
癌でお亡くなりになる方は珍しくないが、僕が今回気になったのは「家族にも病名を伏せていた」という点だった。
僕が乳がんであることは親戚縁者には周知の事実だが、再発〜遠隔転移したことはつい最近まで妻しか知らなかった。
僕の両親にも伏せていたのだ。
理由はもちろん、「心配させたくない、悲しませたくない」からで、いよいよ隠しきれなくなるまで黙っておくつもりだった。
それが子供の優しさだと信じていた。
しかし、隠し通すためには僕も妻もたくさんの嘘をつき続けなければいけないし、いよいよ僕が動けなくなった時に「実は・・・」って告白しても遅すぎるんじゃないかという迷いはあった。
ほんとうに隠したままでいいのかと。
そんな想いをこのブログで書いたところ、皆さまから有用なアドバイスと勇気をいただき、ついに両親に告白するに至った。
後押ししてくれたのは、「親だったら子供のことを何でも知りたいのでは?」という言葉だった。
僕がステージⅣになったことを告白したことで、僕の両親にも少なからず動揺はあった。
「本当は余命を告知されたのでは?」
「思い出作りを急いでいるのでは?」
「この水は癌にいいのだよ」・・・等等。
そんな両親に、
「過剰に心配されるほうが切なくなる。心配してほしいから告白したのではないのだから、今までどおり普通に接してほしい」
とお願いをして、今は落ち着きを取り戻している。
今ではきちんと告白をしてよかったと思っている。
もちろん教授先生が言ったように、
「1年単位で弱っていき、月単位で急変することもある」
なんていたずらに不安がらせるようなことまで報告しないが、自分の病状を正確に理解してくれているというだけで一緒に闘ってくれているような気がする。
しかし、両親は僕が告白したことをどう考えているのだろう。
一度聞いてみよう・・・「知らせない方がよかった?」って。
数日前まで元気だった人が急変したり、最後を看取る人が誰もいなかった・・・なんて言う話はどこにでもあるが、もし彼女が病名や病状を告げていれば近しい人は覚悟を強くして心の準備ができただろうし、最後のお別れだってできたのではないだろうか。
有賀さつきさんの母親はすでにお亡くなりになっているが、父親や中学三年生の娘さんが駆けつけた時には彼女はもうすでに旅立たれた後だったようだ。
大きなお世話であることは百も承知だが、残された家族の気持ちを考えると最後まで病名を告げなかったほうがよかったのか、複雑な気持ちになる。
癌は、「死ぬ準備ができる病気だ」って、セカオピの先生が言っていた。
確かにそう思う。
もし有賀さつきさんが癌だったとすれば、自らその特権を放棄してしまったことになる。
彼女が最後まで病名を伏せていたのは、病気を克服して帰ってくることを信じて疑わなかったからだろうか。
それとも家族に対する優しさからだったのだろうか。
有賀さつきさんのご冥福を心からお祈りします。