初めて腫瘍内科医という職業の方と話をしたのは、セカンドオピニオンの時だった。

僕の最初の主治医(執刀医)は日本乳癌学会に所属し、がん治療認定医の資格こそお持ちだったが、専門は消化器外科。
それに病院自体もがん診療連携拠点病院ではなかった。
そんな先生の口癖は、「標準治療だったらこの病院でもできる」だった。
僕も標準治療以上の治療を望んでいなかったのだが、ブログを開設していろんな方からののお話しが聞けるようになると、
「専門医は持っている引出しの数が全く違うよ」
なんて言われて、主治医がだんだん頼りなく思えてきた。
そうでなくても癌の治療が「外科」領域であることに驚いたし、ま、手術はともかくとしても、その後の再発予防のための薬物療法も全て外科医が面倒を見るというのは少々違和感があった。
治療に関する質問をしても返ってくる答えはほとんど僕の予習の範囲内でしかないし・・・そんな話をがん化学療法認定看護師さんにこぼしていたら、ある病院の腫瘍内科の先生の講演がとても勉強になったよ・・・と教えてくれた。
主治医を変えるつもりはなかったけど、癌治療の専門家のお話しを聞いてみたかったのでセカンドオピニオンを受けてみることにしたのであった。
その時の模様は、
(参考記事:72 男性乳がんをセカンドオピニオンで聞いてみる(その2))
のとおりである。

単身赴任中は憧れの乳腺専門医にフォローしてもらっていたのだけど、CEAが上がった途端、追い出されるように終診になった。
町医者では再発乳がん患者の面倒は見切れないということなのだろう。
これからどうしようかと途方にくれたが、ちょうどいいタイミングで単身赴任が終わったので手術をした病院へ相談に行くと、大学病院の乳腺外科を紹介してもらった。
でも、再発乳がんは手術の適用外だったので、血液腫瘍内科へ回された。
そこで出会ったのが、腫瘍内科医の教授先生である。

ここで腫瘍内科とはどういう診療科なのか整理しておこう。
有名な「亀田総合病院 腫瘍内科」のHPを参考にした。

○ 昔は、癌は外科切除が基本的な治療法であったため、外科医が担当していた。
○ この数十年の間でたくさんの新薬が開発され、内視鏡のような低侵襲手術、放射線治療のような局所療法が目覚しい進歩を遂げた。
○ きめ細やかな全身管理を要するような薬物療法は、外科医からそれを専門とする内科医へと移っていった。

という経緯で腫瘍内科ができたようだ。

日本臨床腫瘍学会のHPをみると、2002年には全国で619名だった会員が2015年では9,068名と13年で15倍になっていた。
アメリカでは人気のある診療科らしい。
何かと気難しいところがある教授先生だが、その中でも数少ない指導医の資格をお持ちなのでこういう巡りあわせは大事にしなくちゃいけない。
 

我が大学病院の腫瘍内科のHPを見ると、
「・・・臓器の枠にとらわれずに、全てのがんの患者さんを対象にエビデンスに基づいた治療、支持療法を行ないます。」
とあって、これが本当なら素晴らしく心強いのだが残念ながら患者の僕にはあまり実感がない。
すでに同じ大学病院で皮膚科や形成外科やらを受診したが、目立つのは縦割り組織で、腫瘍内科が標榜する横断的な診断なんて全く実現していない。
教授先生は腫瘍のことは面倒を見てくれるけど、副作用や心の問題などはあまり親身になってくれないようだ。
そろそろ1年になるが、未だに教授先生を僕の「主治医」と見ていいのか躊躇するくらいだ。
しかも教授先生は忙しい。
診察日は火曜日か金曜日の午前中だけだし、これから先、緊急的に診察や相談したいことがあった時の手順など次回診察日に確認しておかなければと思っている。

教授先生は腫瘍センターの責任者をされているが、腫瘍センターには
・ 緩和ケアチーム
・ がん登録室
・ がん相談室
・ 通院治療室(ケモ室)
という部署がぶら下がっている。
緩和ケアやがん相談室などで、今後の仕事のことやこれからの治療のこと(これは主に妻なのだが)について相談に乗ってもらいたいこともあるのだが、どうも気難しい教授先生が総元締めであることを考えると相談する気も失せてしまう。

これまで何十回となくこの病院でいいのかと自問自答してきたが、教授先生の経歴を考えると多分ベストの治療が受けられるはずだと、自分を納得させてきた。
他のブログの中で、しっかり主治医と信頼関係を結べているのを見ると少々羨ましさを感じる。