ここで少し余談になるが・・・。

単身赴任先の歯医者で歯磨き指導を受けた時に、歯ブラシを歯間にぐいっと差し込んで小まめに動かすという磨き方を教わった。
それをやると歯ブラシが血で真っ赤に染まるのだが、その歯科衛生士さんは「悪い血を出しちゃいましょう」と、まるで癌の放置療法みたいなことを言うので「そんなばかな」と思ったが、実際にやってみるとすごい効果があった。
いくら念入りに歯を磨いたつもりでいても6か月に1回の歯石取りでは超音波スケーラーのバリバリと歯石を砕く音が伝わってきたものだが、この磨き方を実践するとほとんど歯石がくっついていないようで、バリバリという音を聞く間もなくすぐにスケーリングが終わってしまう。

欧米ではデンタルフロスは習慣化しているようだが、日本ではその有益性は認めつつも毎日やるのは少々面倒くさい。
その点歯ブラシを使うのならその延長線上でデンタルフロスを使うのと同じ効果が得られるので、慣れるまで少しコツがいるけれど是非お試しを・・・。
「よくお手入れされていますね」
と褒められること請け合いだ。
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さて、歯のクリーニングが終わって先生の点検を待っていると、いつの間にか診療室にはちょうどいい具合に僕一人だけになっていた。
先生が僕の隣に座ると、歯科衛生士さんが先生に「先月からデノムマブの注射をされているようです。」と言うと、先生は「ええ!」と驚いていた。
先生とは8年越しのお付き合いになるが、いつも3人の患者を同時並行的に治療をされるのでゆっくりとおしゃべりをしたことがなかった。
でも今日は病気のことをお話ししなくちゃいけなかったので、意図したわけではなかったが午前診療の最後の予約にして本当によかった。

先生:「それはやっぱりそのー、(言いにくそうに)・・・病気で手術をされたんですか?」
僕:「はい、2014年に手術を受けまして。。。」
先生:「ええ!? そんな大事なこと、僕お聞きしてましたっけ?」

と少し咎められる。
僕:「(あわあわ)いえ、僕自身そんな大ごととは思っていなかったのでお話ししていなかったんです。先日フォロー中のCTで腰椎に転移していると言われ、これはお話ししておかなくちゃと思って。。。」
先生:「それはやっぱり胸ですか?」

と、なぜか言ってもいない胸を指摘する先生。
僕:「ええ、胸のほうなんです」

と、これじゃ(消防署のほうから来ました)と同じだな、と思いつつも乳がんだなんて言えない僕。
先生:「胸腺癌?」
僕:「(しつこいな)ええ、そんなところです」
と、どんな人でもそうだが「癌だ」というだけでは満足せず、絶対に部位を知りたがる。

「癌」でいいじゃないか。
周りに女性の歯科衛生士さんがいないのならちゃんとお話しするのだが、やっぱり男性乳がんというのは恥ずかしいものだ。

先生曰く、
「顎骨壊死は100人に1人くらいの割合で、外科的な侵襲をする時に少し気を付けなければいけない程度のことなので、そんなに心配しなくてもいい」
とのことだった。
カルテにもきちんと記録しておくと言ってくれて僕も安心した。
単身赴任先で乳がんのフォローをお願いしていたクリニックではCEAが上がった途端に放り出されてしまったので、歯医者さんでも
「もう、うちでは面倒見きれない」
と言われることも覚悟していたのだが、そうならなくてよかった。

次回のスケーリングは12月に予約を入れた。
顎骨壊死は100人に一人というが、100人に一人と言われている男性乳がんになった僕はそう言われても安心できない。
ブログでも顎骨壊死に触れた記事はよく見かけるので、ランマークちゃんにはなんとか本来の仕事だけを果たしてほしいものだ。