ホルモン感受性がポジティブだった僕は、タモキシフェンを2015.4.23(術後約11か月後、ハーセプチン8クール目の時)から5年から7年という超長期にわたって、毎日1錠服用するように指示された。
ホルモン療法の作用機序、副作用について簡単な説明があったように記憶しているが、いくら僕にホルモン感受性があると言ってもこんな錠剤一つで癌の再発が防げるものなのかとずっと疑問を持っていた。
しかも男だし。
 
「飲まないよりまし」
TAMが男性乳がんに効くのかという質問に対し、セカオピの腫瘍内科の先生にそう言われたことを思い出す。
しかし男性にはこれしか効かないのだと。
 
ケモが終わればワサワサと髪の毛が生えてくると聞かされていたが、僕の場合は1年半経ってももともとあった髪の毛の3分の1程度しか戻ってきていない。
「この抗がん剤(EC/nab-PTX)を打てば体中の毛が抜け、二度と戻ってくることはありません」なんて言われてたら覚悟を決めてケモに挑んでいたと思うが、40歳半ばでハゲ親父の仲間入りする気なんてサラサラなかった僕は、1年半経ってもぽやっとしか生え戻ってこない髪の毛に、(こんなハズじゃなかった)とすっかり気落ちしてしまった。
しかもヅラ付である。

「TAMが影響してるんだよ」
って言う人もいたが、だからと言って髪の毛のためにTAMをやめる勇気なんて出なかった。
 
そんな不信や不満があったものの、根が素直で几帳面な僕はこの1年と8か月間、毎朝必ず一錠、心療内科で処方されていた抗不安薬(メイラックス)とともに服用することが日課になっていた。
しかし、CEAが22.5まで上昇したことで、とうとう教授先生から「服用中止」が言い渡されてしまった。
5年~7年の服用予定が、たったの1年8か月で終わってしまったのだ。

自宅にはまだ1週間分ほどの在庫があったが貧乏性の僕は捨てることができないので、服用中止と言われてからもなくなるまで飲んでいたが、これがホントの最後の一錠である。
<最後の一錠>
※ 後発薬です。

 

これを飲んでしまえば僕は当分無治療状態になる。
縦隔リンパ節の腫大、肺の怪しい影、CEAの増悪が進行している身分では、たとえ「飲まないよりまし」って言われたTAMでも最後の秘薬に思えてきて、すがりたくなる。

癌に効果がなくなったのなら、あとは服用中止によって髪の毛がわさわさと伸びてこなければなんだか損をした気分になってくる。
 
最後に参考として、男性乳がんと薬物療法について書かれたページの抜粋を下記に示しておく。
 
【日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン】(HPから抜粋)
http://jbcs.gr.jp/guidline/guideline/g1/g10350/
○ 男性乳癌に対するタモキシフェン投与の有効性は、ランダム化比較試験はない。
○ アロマターゼ阻害薬については、ドイツの地域がん登録をもとに術後内分泌療法(タモキシフェン207人,アロマターゼ阻害薬50人)を施行した257人が後向きに解析されている。
○ アロマターゼ阻害薬を投与された患者のOSは、タモキシフェンを投与された患者のOSより不良であった。
○ アロマターゼ阻害薬は男性乳癌に対する術後内分泌療法としての有効性を示す前向き試験のデータはまだなく、アロマターゼ阻害薬はエストロゲン抑制効果が男性では閉経後の女性ほど強くない。
○ 現時点では、術後内分泌療法としてアロマターゼ阻害薬は推奨できるだけの根拠に乏しい。

※ OS=生存期間or生存率のこと。