眉毛、まつ毛が少しづつ薄くなっていったのは、アブラキサンを始めてからのことだった。
髪の毛はウィッグでごまかせるにしても、眉毛が抜けるのは困るなぁと、抗がん剤の治療を受ける前からものすごく心配していた。
ウィッグをお願いした「スヴェンソン」の女性カウンセラーに一度相談してみたが、「そんなものは描いたらよろしい」とにべもなかった。
女性なら眉毛を描くことは慣れているのかもしれないが、男の僕は今まで描くどころかお手入れすらろくにしていなかったので、不安感ばかりが募る。
ネットで「付け眉毛」なるものも発見したが、汗でひらりと落ちたらどうしよう・・・とか、お高いのに果たして自分に似合うのかという不安があったのでやめにした。
そんな時、ネットでこんなものを見つけた。
剃刀で有名な「貝印」の商品「メンズアイブローガイド 男眉」(笑)
中にはアイブローペンシルとこのようなガイドがセットになっている。
早速ガイドをおでこに当て、ペンシルでささっと描いてみたが、どうも塗りつぶしてしまうようで、妻からは「キミは歌舞伎役者か」と突っ込まれた。
ということで買ってはみたもののアイブローガイドはほとんど使わず、ネットで「眉毛の書き方」なるサイトを渡り歩き、これを参考にしながら毎朝苦戦しながら眉毛を描いている。
なんせ眉毛が一本もないつるっとした状態なので、鏡に目を凝らしてかつてあった眉毛の毛穴を見つけ、そこから一本一本描くように描いていく。日によってうまくいく日もあれば、そうでない日もあって、そんな時はぶつけようのない怒りで、自分の顔をペンシルで無茶苦茶に落書きしたい衝動にかられる。
だいたい15分くらいかな・・・すっかり日課になってしまった。
今では街で女性を見かけると、眉毛を一番最初に見るようになった。
きれいに描けている人もいるし、これなら僕のほうが上手だとか、時にはぎょっとするような眉毛を描いている人もいてなかなか面白い。
あると当たり前だが、なければ不自然な眉毛。
ざわちんさんのように、眉毛で顔の印象がすごく変わることを知った。
アブラキサンは前回で卒業したので、数か月すれば眉毛が復活するのだろうが、こんどは
きちんと眉毛を手入れし、男前の眉毛を描くことを少し楽しみにしている。
EC療法では髪の毛は脱毛したが、眉毛は残っていた。