ここのアメブロでのブログ開設は二代目で、初代ブログで書いたこの記事の正確な日が分からないのだが、2015年4月6日に初代ブログを開設してすぐの頃の記事の中で、


「がんは移動する・・・」
最近、右鎖骨から右首筋にかけて、またしてもこの「にょろっ」とした感覚があったのだ。
現在のところ触れるようなしこりはないのだが、術前にこんな体験をしていた僕は、また新たな腫瘍ができて脳へ移動したのではないかと嫌な気がしている。


と、頭への転移を感じさせるような不思議な感覚があったことを、すでに2年前に記事にしていた。
 
このブログでは、
「3 出会い・・・僕と乳がん」
の最後のほうにそのことを書いているが、脳ではなかったが頭への転移のことは見事に当たってしまった。
もちろん気のせいだと言うこともできるけど、あの時首の血管の中を頭のほうに向かって細長い虫でも移動したかのような不思議な一瞬の感覚は、これまでに体験したことのないものだったのだ。
 
2017.3.21
生憎の雨の中、しかも連休明けということもあって駐車場への入庫待ちの車は20台を越えていただろう。
僕はバスなので関係なかったが、病院内はきっといつにも増して混雑しているだろうと予測した。
今日は先日の頭部造影MRI検査の読影結果を形成外科でお聞きし、そのあと血液腫瘍内科の教授先生の診察を受けることになっている。
11:00の形成外科の予約に対して教授先生の予約は11:30。
それを考慮してくれたのか、形成外科の待合室では座るところもないほどの大混雑だったが、受付後、順番を飛ばして僕を呼んでくれたので10分程度で診察室に入ることができた。
以下、形成外科の先生のお話を箇条書きで記す。

○ 読影の結果、左後頭部、左側頭部、左前額部、左前頭部に多発皮膚(皮下)転移の疑い。
○ 頭頂部に骨転移の疑い
○ 左後頭部の腫瘍は2㎝大で表皮嚢種や炎症にしては奥が深い。
○ 治療方針は、切除するかケモで抑えるのか教授先生と相談してほしい

とのことだった。
<左後頭部の腫瘍>

 

「多発」という所見の中の言葉を見てショックを受けたが、頭蓋骨への「骨転移」もショックだった。

ついに・・・ついに骨にまで転移したか。
これじゃ僕が考えているほど長生きできそうにないな、と考えながら診察室を出て血液腫瘍内科へ向かった。
 
血液腫瘍内科では診察まで3時間待たされた。
画面表示に僕の診察券番号が次に表示されていたので1時間くらい待ちかと思っていたが、気がつくと僕の番号が消えていていつ呼ばれるか分からなくなり、待合室から動けなくなってしまった。
持ってきてた新聞を広げたが、頭の骨転移のことで気が動転して内容が全く頭に入ってこない。
それでもやっと新聞を読み終えて、これからのことを考えているうちにウトウトとしてしまった。
 
頭蓋骨への骨転移は珍しいのかなと思ったが、ググってみると特に珍しいものでもなさそうだ。
頭蓋骨なら体重による負担がかかりにくくて骨折しにくい場所なので、すぐに対処する必要はないだろうか。
骨折しにくい反面、進行すると溶骨性にしろ造骨性にしろ脳への負担がかかりやすいのは恐ろしい。
教授先生はレトロゾールの効果がないと判断してすぐにケモへ切り替えようとするだろうか。
しかし僕には今のところ転移による症状が全くないので、ひょっとしたらこのまま今の治療を続けようというかもしれない。
 
それにしても3時間は長かった。
待つことにも飽きてきた頃、ようやく僕の番が回ってきた診察だったが、教授先生のご機嫌は恐ろしいほど悪かった。
以下、教授先生のお話を箇条書きにする。
 
○ MRIじゃ何も分からんよ、CTじゃなきゃ。
○ 左後頭部の腫瘍が大きくなったり小さくなったりして気味が悪いなら、切ってもらったらいいじゃない。
○ 治療は今のままレトロゾールを続けるよ。腫瘍が大きくなったり何か症状が出るようになったらその時考える。
○ 以上、おわり!
 
と、3時間待って5分で診察が終わってしまった。
とてもじゃないが何かを相談するような雰囲気ではなく、半ば診察室を追い出されるように診察を強引に終わらせてしまった。
MRIの画像も読影所見も全く見ていないし、骨転移があったというのに全く関心を示さない。
薬もまだ3週間分のフェマーラが残っているのにまたさらに1ヵ月分と、たっぷりのカロナールを嫌味のように処方箋を出してくれた。
 
いやもう、温厚な僕でもあまりの教授先生の態度のひどさに口もきけないほどの怒りがこみ上げてきて、鎮めるのにしばらく時間がかかった。
転院することも真剣に考えたくらいだ。
 
その後、ポートフラッシュをいつもの看護師さんにしてもらったが、
「看護師さんも大変ですね。今日は忙しくてお昼も食べてないんじゃないの?」って言うと、
「いや、私たちはまだ交代で30分とか休憩できるけど、先生は朝からずっと診察だからね。」
「今日の教授先生、すっごく機嫌悪かったよ」
「あ、たいちさんも教授先生の性格が分かってきた?先生なんだからもう少し広い気持ちで患者に接してほしいと思うんだけどね。まだたいちさんなんか教授先生と上手に接しているほうだと思うよ」
なんて、看護師さんと雑談しているうちに段々と気持ちも落ち着いてきた。
振り返って考えてみるとこの看護師さんも事あるごとに、
「教授先生の機嫌のいい時に聞いとくからね」
ってこれまでに何度も僕に言っていたが、教授先生はそういう性格の持ち主だったということで初めてその意味が分かった。
機嫌の悪い時には何を言っても無駄なのだ。
 
しかしこれまでの教授先生の診察を考え直してみると、僕の今後の治療計画のことも考えていてくれたし、時間を気にせずに相談に乗ってくれた時もあったし、今日は忙しすぎて運が悪かったと思ってあきらめることにしよう…と思えるようになった。
看護師さん、ありがとう。
 
最後に・・・教授先生との診察の時に、
「保険の話なんですが、余命6ヵ月で生命保険の生前給付が受けられるようになるんですが、ここまで転移したとなると書いていただくことはできますか?」
と聞くと、
「うーん、治療費に困っているっていうのなら書くけど、あなただってまだ死ぬ気はしないでしょ?働けているのならまだ書けないな」
ということだった。

確かに今お金に困っているわけではないが、
○ 元気なうちにお金をもらって遊びたい
○ 高額療養費の区分上、16万円以上が対象となり、多数該当でも最低約9万円の支払いが必要になる
※ 2年前の多数該当は4万円程度だった。
○ 余命について先生がどう考えているのか探ってみたい
ので、半分わざと聞いてみたのだ。
 
「じゃ、ケモが始まったらまた相談します」
というと、「分かった」って言っていたので、ま、そろそろ余命を考えてもおかしくない状態になったんだなあってことはわかった。
あと、3年くらいはもつかな・・・もってほしいな。
 
猫目さんじゃないけど、徐々に身辺整理を粛々と始めてもいいのかもしれない。
恐れているのは急に症状が悪化してやりたいことができなくなることだ。
後悔する前にできることはやっておかなくちゃ。