2015.9.14(月)
今日は一日中病院めぐりをしていて忙しい日だった。
午前中は14回目のハーセプチンの点滴を打ち、午後からは18回目の放射線治療、そして夕方からは歯医者である。

このブログを読んでいただいている皆様はもうご存じのことだと思うが、僕は大の病院嫌いで、歯医者になど一度も自分から行こうと思わなかった。
しかし20歳を過ぎたころ、奥歯にできた虫歯がうずいてどうにもならなくなり、生涯最大の決心をして歯医者へ行くことになった。
20年前のことで記憶も薄らいでいるが、痛かった虫歯は抜歯することになり、しばらく抜いた歯の窪んだところにぶよぶよとした血の塊ができて、しばらくものすごく気持ち悪かったことだけ覚えている。

小さいころから一度も歯医者に行ったことがなかっただけに、虫歯になりやすい歯のほとんど全てに虫歯菌が住み着いていたが、この時イヤイヤついでに全ての虫歯を治療してもらった。
虫歯になりやすい歯にはクラウンを被せてもらったのだからもう虫歯にはならないだろう、と大きな勘違いをした僕は、定期的にメンテナンスが必要などとは考えもしなかった。

それから20年が経った。
今の妻と結婚することになり、数週間後には結婚式という差し迫った時に、何かの拍子で奥歯の詰め物がとれてしまったのだ。
痛みはなかったが、詰め物がすっぽり抜けたところには食べ物が詰まって仕方がない。
歯医者に行くのは嫌だったがこうなってしまった以上どうしようもなく、さすがの僕も観念して職場近くの歯医者さんに行った。

長身で明石家さんま似の優しい先生だったが、レントゲンを撮ったりして僕の歯を総点検された後、
「今のたいちさんの歯の衛生状態は40点ですね。」
と静かにお説教をいただいた。
数週間後に結婚式が迫っていることを伝えると応急処置だけをしてくれて、本格的な治療は新婚旅行が終わってからすることになった。
これが2009年のことだ。

20年間放置していた歯の治療にはおよそ一年半ほどかかった。
この先生の腕が良かったのかそれとも医療技術が向上したのか、治療中に痛みを感じるようなことはほとんどなかった。
それでもビビリの僕は治療を受ける度に、
(今度の治療ではどんなことをされるのか?痛くはないのだろうか?)
など、ネットを駆使して予習を怠らなかった。
この「治療前にどんなことをされるのかを予め調べておく」という習慣は、乳がんの治療を受けている今でも引き継がれているが、そもそもの原点はここにある。

しかしそこまで予習をしていても治療中の予期せぬ痛みにいつでも対応できるよう両手に握りこぶしを作り、全身を鎧のように固めていた。
先生の助手をつとめる若い女性の歯科衛生士さんに笑われないように、顔だけはリラックスしているように繕っていたが、体は全身カッチカッチ。
きっと彼女には僕がビビリであることはばれていたに違いない。

一番憂鬱だったのは、歯ぐきへの麻酔注射だったが、最近の医療技術はすばらしい。
最初に歯ぐきにさっと麻酔薬を塗り、それから極細の注射針で麻酔を注入するので全くと言っていいいほど痛みを感じなかった。
もちろんゆっくりと時間をかけて注入してくれた先生の配慮と、腕が良かったことが大きいのだろうけど、あれなら歯ぐきへの注射も恐れることはない。

こうして再び全ての虫歯を完治させた僕はさすがに深く反省し、先生に勧められるがまま半年に一回の歯石取りを今まで欠かさずに行っている。
虫歯になりかけているような歯はこの半年ごとの定期点検によって早期発見、早期治療で虫歯とはすっかり無縁になった。

この歯医者での経験が僕の病院嫌いを少し克服させ、これが後の乳がんの発見へとつながっていくのであった。