先日、kindle のpaperwhiteという電子書籍リーダーを購入した。
僕は本や新聞は紙で読みたい・・・と思っていたほうだが、なんでもネットからダウンロードできるので本屋さんになかなか足が向かなくなった。
ネットしてるとなぜか(読みたいな)って思う本がタイムリーに広告になって表れるし、新聞だってネットニュースですぐに読めちゃう。
紙の本を読む時間がなくなったことを気にしつつも、なかなかこんなネット生活から抜け出せなかった。

ある日、電子書籍で佐藤優さんと池上彰さんの対談集である「僕らが毎日やっている最強の読み方−新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意」という本をリーダーで読んだ。

 

 

僕のようなしがないサラリーマンが、両先生が普段読むような読み方で書を読むなんてとても真似できないが、それでも何点かは僕にも参考になるものがあった。
その一つが「ネット断ち」である。

彼らは言う。
○ ネットの情報は玉石混淆だが、それを素人が見極めることは非常に困難である。
○ 知りたいことがあるのならネットから入手するよりも、きちんとした校閲が入る新聞
や本から情報を得るべきだ。
○ ネットは便利だが強力な誘惑があり、結果的に時間に対して得られる情報が少ない。
○ 自分の見たいものしか見なくなる。(情報が偏ったものになる)
○ 「いつか時間ができたら本を読もう」では読めない
・・・とのことだった。

そこで僕が買ったのは紙ではなくkindle の電子書籍リーダーだったのだが、それは、
○ ブルーライト量が少ないので目に優しい。
○ ネットへの接続はできるけど、サーフィンができるようなものではない。
○ 今後、もしも入院したとしてもいくらでも自由に本が読むことができる。(←これが一番大きい理由)
○ 本の置き場所を考えなくてもよくなった。
○ スマホやタブレットより断然軽い。
ことかな。
妻に言わせれば「タブレットを持っているのに贅沢をして・・・」ということらしいが、そうではない。
事実、これを買ってからものすごい勢いで本を読んでいる。
これまで隙間時間にはネットニュースだったのが、今ではポケットからさっとkindleを出して本を読んでいる。
スタバに入ってもそう。
なんだかものすごーく時間がかかったが、ようやく本が好きだった頃の自分を取り戻した・・・そんな感じがした。

 


 

で、今読んでいるのが腫瘍内科医の勝俣範之先生の「医療否定本の嘘」で、サブタイトルが「ミリオンセラー 近藤本に騙されないがん治療の真実」。

 

なにやら「がん放置療法の近藤先生が2回対談を断った・・・」というのが、この勝俣先生らしい。

様々な考え方があるがん治療の中で、僕が特定の先生の書いた医療本をチョイスするのは珍しいのだが、たまたまYouTubeでこの先生の講演を聞いてもっと深くお考えを知りたいと思ったのだ。
先に紹介した本の中で、池上彰さんも言う。
「セミナーや講演会なんかそうですね。何千円かの受講料を払って90分の話を聞いても、書籍のページ数に換算すると、たいしたことはありません」・・・と。
まだ読んでいる途中なのだが、もう目から鱗がこぼれ落ちまくっている。

「がん放置療法」の近藤先生のことを、かつての勝俣先生…当時は研修医だったが尊敬していたらしい。
それはある抗がん剤の比較試験の結果に対して誤りを鋭く指摘をしたことや、乳がんで「乳房を切り取っても切り取らずに温存しても、治療成績は変わらない」という欧米のデータを紹介したことなどの功績に対してであるが、同時にこうしたことが医療界にあまり認められなかったことで恨みが育ったのではないか・・・と推察もされている。

僕が本に線を引っ張った(ハイライト)ところを紹介してもいいだろうか。

① 放っておいても進行しないがん
② 放っておいたら進行していずれは死に至るけれど、積極的治療で治るがん
③ 積極的治療をおこなっても治癒は難しいけれど、治療で延命・共存できるがん
④ 積極的治療をおこなっても、治癒も延命・共存もできないがん

近藤先生の自説では②と③が抜けているので、治療が全否定されていると言う。
ただ悩ましいのは現代医学では①〜④をはっきり分けることができないということだが、どんながんにも進行して命を奪う可能性があるわけだから「放っておいても大丈夫」ということにはならない。

○ 近藤先生は自説に誘導するために、一部の正しいことを極端に誇張することが問題である。
○ 治療は患者自身が納得した上で行えばいいが、正しい情報がきちんと伝えられた上での判断なのか疑問に残る。

5mmで見つかった早期乳がんを放置して18年後に亡くなった患者がいるが、乳房温存術を受けていれば5年生存率は90%以上だった。
○ 放置療法は「倫理審査委員会の承認」を受けていないので人体実験そのものであり、許されることではない。
○ そもそも「放置療法」を信じる人というのは、手術や抗がん剤、放射線という積極的な治療が怖くて「放置療法」に逃げてしまうのだろう。

ところが今度は癌を放置していることが怖くなって、「末期がんビジネス」にはまってしまう。
○ 「抗がん剤で苦しむ親を看取ったので抗がん剤だけは使いたくありません」というのは、副作用に対するマネジメントができていないからだ。これが専門医と外科医などの一般医が行う抗がん剤治療の一番の違いである。
○ 「低用量抗がん剤」が効くなどと言う医師が一部にいるが、そんなエビデンスはない。またそんなことを言う医師は専門医ではない。

・・・といったことを、実際に近藤自説を選んだ患者さんがどういう経過をたどったかなど、分かり易く説明されている。

僕の最初の主治医は外科医だったが、
○ 抗がん剤の投与は初回は入院で、以降は通院で投与を受けた
○ 発熱した時、僕は不満だったけど敗血病にでもなったら大変だと投与量を減らされた
○ 生ものを食べることは禁止
○ 人ごみに入るのも禁止(マスクの着用推奨)
といったように、抗がん剤治療を受けた患者なら誰しもが経験することを当たり前に経験したが、これについても勝俣医師はこう述べる。

抗がん剤の投与を2回目から外来で行えるのであれば、最初から外来でできるはず。
術後の抗がん剤は再発を減らし、治癒率を高めるのが目的で、乳がんの術後の抗がん剤は投与量を減らすと、再発率・生存率まで減ってしまうという複数のエビデンスがある。
生ものには細菌がついていることが多いので、免疫力が落ちているときには避けましょう…というが、これに明確な根拠はない。
特に乳がんでは白血球が減少する期間が短く、免疫低下の程度もそんなに強くはない。
人ごみ禁止やマスクの着用よりも、一番大事なのは手洗いをしっかりすること・・・だと言う。

実際にEC療法中に好中球が下がり、高熱を出した僕には首をかしげるご意見もあるのだが、大事なことはがんは腫瘍内科医が診なくちゃいけないよ・・・ということらしい。
腫瘍内科医のカリキュラムの問題で、腫瘍内科医の中にも「消化器系のがんしか診ない」とか「呼吸器系しか自信がない」という医師もいるのは事実で、乳癌をきちんと診療できる腫瘍内科医は全国で30人にも満たないと言う。

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僕は標準治療で十分だと思っているので、近藤先生の本を読んで放置療法を研究しようとかどちらの意見が優れているのかを判定する気などさらさらない。
僕のブログのコメント欄は一時的に閉じさせてもらっているが、治療には様々な考え方を持つ方がいらっしゃることはよく存じているつもりだ。
この記事を読んで、ご自身の意見を見直したり、逆にさらに強くするきっかけになればいいと思っている。
勝俣先生は僕がかねてから疑問に思っていたことを腫瘍内科医をいう専門家の立場から分かり易く教えてくれた。
これから先を読むのが楽しみだ。