「342 両親に伝えますか?(その1)「真実」」の記事で、両親に心配をかけたくないという思いから再発したことを黙っているが、本当にそれでいいのか・・・と、自問する記事を書いた。
ありがたいことにそれに対して様々なご意見を頂き、もう一度深く考えるキッカケになった。

結論としては機会があれば両親に話してみようかな・・・という思いに大きく傾いた。
暗い話はしたくないけれど、現実的にステージⅣと言うのは進行癌の中でも最も進んでしまった状態であり、これを黙っているほうが親不孝だと思えてきたのだ。

ある日突然、僕から「あと○ヶ月の命なんだ」と余命を告げられ、おろおろしている間にますます悪くなり、あれあれと思っている間に逝っちゃった・・・ではあまりにも両親が哀れだ。
きっと残った妻も「なんで早く言わなかったのか」と、責められるに違いない。
しかし責めたところで僕は戻ってこないし、両親にすれば、
・ もっと一緒にいろんな所に行っておけばよかった
・ もっとおいしいものを食べさせてあげたらよかった
・ もっと闘病の辛さを分かち合いたかった
など、後悔ばかりが募ることだろう。
これではいけない。

45歳のおっさんでも両親から見ればいくつになっても子供は子供。
躾けの厳しい両親に反抗した時期もあったけど、年老いた今ではすっかり好好爺と好好婆になってしまった。
昨今では僕が少しでも厳しいことを言うと何とも言えない悲しそうな表情を見せ、かえって僕のほうが「言い過ぎたかな」と反省する始末。
そんな両親に癌が再発したことを告げ、骨や縦隔リンパ節、反対側の脇の下や頭皮にまで癌が広がっていることを話すのは心が引き裂かれそうなほど辛い。

きっと・・・その場は僕も含めてとっても悲しい雰囲気になるのだろう。
僕が泣いちゃいけないのだろうけど、今からとっても自信がない。

昨夜も電話で母親と話をしていて、僕があちらこちらへ遊びにに行ってることが話題になり、何気に、
「大きな病気になったんだから行けるうちに行っとかないと・・・」
と言った途端母親の口調が変わった。
「あんた。それ、どういうことよ?」
と、釈明に大汗をかく破目になってしまった。
僕から見ればいくつになっても母親は母親。
見た目は好好婆でも本気で怒ればすぐにおろおろしてしまう。

「いつ?」とははっきり決めないけど、いつか実家でみんなで食事をするような機会でもあればきちんと話をしてみることにしよう。
癌になったのは残念だけど、同じ血が流れている家族なのだから最後まで付き合ってもらおうかな。
楽しいことばかりを追い求めるなら友達でもいいはず。
この病気がきっかけでより一層家族の絆が深まれば、僕も病気になった甲斐があるってもんだ。
人間関係が希薄になり、自分と他人との間に見えないけどくっきりした境界線が引かれている現代で、すっかり家族の絆という言葉を忘れていた。

誰にも迷惑を掛けたくない…その思いが僕を沈黙させたのだろう。
でも、家族だったら少しくらい甘えてもいいんだよね?