チョークの粉の匂いがしない

今日は日直もテストもなくて

わたしは先生じゃない時間を生きている


読書カフェ

ページとページのあいだに

ひっそり挟まれた、静かな午後


となりの席

カップの音が、優しく鳴って

顔を上げたら

知らない誰かが、こっちを見てた


「それ、おもしろいですか?」


本のタイトルで話しかけられるなんて

まるでドラマみたいで

ちょっと笑ってしまった


「はい、でもちょっと、こっちの世界に帰れなくなりそうです」

って、答えたら

その人も笑った


気がつけば

わたしの読みかけのページより

となりの人の目のほうが、気になっていて


先生じゃないわたしが

誰かに見つかるなんて

そんな奇跡が

この午後に隠れてたなんて


コーヒーのにおいがして

ページが、ひとつ、めくれた