悲しみはどんどん怒りへ変わっていった。
怒りを直接ぶつけたいのに会う事もできない。
連絡もできない。

しばらく、その話題には触れないという彼との約束。
その約束を思うと何も出来なかった。
彼に怒りをぶつける勇気もない。
縁を切られる事が何よりも恐かった。
何処へ向ければ良いのか分からない怒りを出すはずも無いメールに向けて泣きながら毎日のように書いた。
Bossとの出会いは、私に多くのものを与えてくれた。
日本で何年か経験があった私は、彼からすぐ仕事を貰う事ができた。
CDジャケットや企業のパンフレット、CIロゴ。
こんな仕事をすぐに貰えるのは、本当に幸運な事だと思う。
インターシップといっても受付などをやらされるのがザラだと聞いていただけに、Bossに感謝した。

毎日、朝から夜まで仕事の他にもスケジュールを埋めに埋めた。
仕事をする度に自分に今必要なものが分かり、そのために必死で勉強した。
けれど、ふとした瞬間にやはり彼のことが度々頭の中をよぎる。
その度に手が止まり、涙が溢れそうになるのを堪えた。
慣れない環境、不安定な精神状態。
しばらくは、スムーズに仕事をする事が出来ず、そのことがもどかしく自分があまりにも不甲斐なくて苛立が耐えなかった。

その苛立をさらに増殖させたのは、彼の態度だった。
無視される度に次第に悲しさは怒りに変わっていった。
なぜ私が無視されなければならない?
問題を起こしたのは彼じゃない。
立場逆になってない?
あまりに理解不能で、ずっと頭の何処かに彼が存在し続けた。
Lにあった次の週、幸運にも現在通っているデザインスタジオのBossから連絡があった。
彼とは1ヶ月前に知り合いのあるパーティーで出会った。
何かあった時のためにと持ち合わせていた日本でのDTPデザインの活動をまとめたポートフォリオを見せ、慣れない英語でロンドンで何をしたいかを必死に彼に説明した。
ちょうど彼の事務所のスタッフが辞めたばかりで、席が空いているから来てもいいという話になり、しばらくしたら連絡するという事になっていた。

ちょうどいいタイミングで飛び込んできたBossからのオファー。
その週から私は彼の事務所でインターシップのようなかたちで働くようになった。