フランスのフォトグラファー、ジャンルー・シーフのプリントを観る機会があった。

(シーフは日本ではゴクミ・後藤久美子の写真集で有名ですね。)

 

 それは広角使いのシーフらしい、おそらくライカとシュナイダー・スーパーアンギュロン21mmで撮られた素晴らしいポートレート。

 す超広角レンズで撮ると遠近感が誇張され画面も四隅に歪むから、普通は女性ポートレートを撮ったりしない。それを逆手に取り雰囲気たっぷりの写真だ。

 

 つい昔の事を思い出してしまった。

ワタシはかつて広角レンズばっかり使っていたのだった。


 高校生の頃まで28mmを常用してきたワタシは、さらなる超広角レンズが欲しくて欲しくてしかたなかった。

 大学生になってアルバイト収入が入るとやっと念願のMCロッコール21mmが買うことができた。

 このレトロフォーカスタイプの大口径F2.8超広角は、重いけどデッカくて押し出しが良い。




 しかしこのレンズ。

どうしても受け入れ難い欠点があった。


それはヘンテコな歪曲収差補正だ。

 当時の広角レンズにありがちな樽型歪曲なら、いくら酷くてもまだガマンが出来た。

 しかし、このレンズの写りは樽型歪曲を糸巻き方向に中途半端に補正した陣笠型と言われる酷いモノ。


 画面端に直線を置く構図では、

水平線がグニャグニャグニャと3回不自然に波打ち。縦位置ではビルのエッジが気持ち悪く何度も捻じ曲がる。不自然極まる。

 

やっとの思いで高い金を捻出したのに、大失望。


 オーバーではなく、ミノルタという企業を正直疑ったね。こんなレンズ描写設計を許すなんて。

(今は多分ほとんどの人はこんな写りは経験がないだろうと思う)


 そんな時、ライカのスーパーアンギュロンで撮られたプリントを見た。凄い。

ワタシの陣笠君では絶望的に撮れない直線がビッとキレた写真。


でも当時1ドル290円くらいで、ライカも、ましてやスーパーアンギュロンなんて雲の上。


と思ったら今は無き銀座の中古カメラ屋でみつけちゃったの。何を。

そう旧世代のロッコール21mm。


対象型レンズ構成の旧型レンズ。後端がマウント面より引っ込んでいるため、わざわざミラーアップして装着しなければならず、当然一眼レフではなくなる。

対象型レンズ構成はスーパーアンギュロンと同じじゃん!(SA3.4と同じ4群8枚、パクリかぁw)


 その時は迷わず新品同様MCと交換(+なんか色々、フィルターやらフィルムやらいっぱいおまけもつけてもらった記憶)した。


この旧型レンズ。

気になる歪曲の不自然さは無く気に入った。

 最短が寄れないという新たな問題や外付けファインダーが笑っちゃうくらい樽型視野なのはご愛嬌(ライカのSアンギュロン外付けファインダー欲しいけど中古で10万円以上しましたもん)。

 

 周辺光量落ちもド派手に空が落ちてドラマティックで好きでした。


てな訳で、紆余曲折あったけど

和製プアマンズアンギュロンを手に入れたのでした。


 それからというものコレばっかりで、すっかり肉眼視角が21mmになっちまう程であった。


 1985年8月、そう日航機墜落の夏でした。韓国慶州の史跡臨海殿にある池に、このレンズ付きカメラを落としてしまった。ダイナミックに水面に出て来た大きな鯉を撮ろうとして、カメラを向けた時に池の欄干に当たってダイビング!

 周りの方を巻き込んだ大捜索騒ぎの末、水没カメラと21mmはサルベージされたのだが。もちろんお亡くなりになりました。