以前、レンズの被写界深度について書いた時に


被写界深度算出の元になっている、許容錯乱円と基準となるプリントの鑑賞距離について書いた。

その時に【鑑賞距離】なるワードが頭に残ったのです。

絵や写真を観る時、相応しい「鑑賞距離」というのがあるだろうか?

そんなもん好きなところから観ればいいじゃん。


大きな絵なら全体を見るのに引くし、部分を見たかったら、あるいは小さな作品なら近寄れば良いだけの話だ。

そうその通り、
感じるままに、自由に、位置取り出来たら最高です。

 アメリカや欧州の美術館では、そうなってるのが当たり前。名画に数センチまで近づける。


★ただワタシがこのブログで、思うのは

ぜひやってみて欲しい

オススメの鑑賞距離のこと。

 

 それは、
具象画なら、描いた画家の眼の位置に
写真なら撮った撮影者の眼の位置に
立ちたい!という事なのです。

わかりやすく写真で言えば、
撮影したレンズの画角の位置から鑑賞してはじめて、生のパースが感じられます。


だから広角レンズで撮った写真なら、レンズ画角に合わせ撮ったと思われる位置までグッと近づくと最高😀

この鑑賞距離=制作者位置
てな事を強く思った事がありました。

★それは秋田県立美術館でのこと。

この美術館は、秋田県出身の藤田嗣治・レオナール・フジタの作品コレクションで有名です。

 わざわざコレを観るためだけに秋田へ行ってもワタシは充分満足できる。


中でも「秋田の行事」は圧巻❗️

縦3.65m、横20.5mもあるとてつもない大作をわずか15日で描いたというのだから凄まじい。

恐ろしい画力だ。

 この絵のためだけに専用の大きな部屋を作ってあり、全体を観る位置まで引くことができる。2階からの展望も可能だ。


しかし、ワタシがオススメする鑑賞距離はそんなところからではない。


画家フジタの位置からだ。


(↑JR東日本のポスターのコピペ。小百合さんの位置は絵から7mくらい?)


フジタの立ち位置目線は、おそらく2mくらい?だと思う。かなり近い。というか近すぎるだろと思うに違いない。

 その位置に立つと、そう、全く絵全体は見えない。神輿や鳥居を遥かに見上げ、足元の人間模様を見るには頭を下げて見る。

 けれど、それはまるで広大な絵の世界の中にリアルにいるみたいな気分になる。

 そのまま平行移動すると巨大な絵巻物の物語が20メートルも映画のように展開するのだ。凄い!


しかし❗️


(↑秋田の行事・部分   コピペ)


しかしだ!残念。

 雪が積もった地面は、作者フジタからは見下げ目線なのに、床から2mも嵩上げされて展示された絵では、絵の人々の足元を、ワタシは不自然にも見上げなければならない。

 フジタが優しく見下ろしている雪の上で遊ぶ犬も、しゃがんでいる少女も、観客は不自然に見上げて見ることになる。

 ああ!残念としかいい様がない。


(展示は藤田の希望に沿っているというが)

ワタシは断然、「床に直置きすべき」だと思うよ。と遠吠えしたいw


(↑同じフロアにある藤田の「北平の力士」.コピペ)


この絵、フジタが思い出を再構築したちょっと不思議なパースな絵だけど、オススメ鑑賞距離は、おおむね画面から1.5mくらいとかなり近い。

 騙されたと思ってグッと近づいてみて下さい。

その位置から鑑賞すると(力士を見上げ、かつ脚元を見下す超広角レンズで撮ったような大画面)の中に入り込める。最高❗️


と、まあ、画家や写真家の位置に立って作者の気分になって観ることをしてみて楽しんでいる訳です。


色んな鑑賞距離を楽しめる美術館であって欲しいものです。