「キモチ良さではメシは食えない」
フォクトレンデル・ウルトラマチックは、
モテ遊ぶ、弄ぶ、イジリ倒す楽しみ・嬉しさのカメラ分野があれば、その至高である。
(個人の感想ですw)
名前はウルトラ、レンズはゼプトン(7)
まるで遠い宇宙の果てから来た
"ウルトラセブン"そのものではないか!
(↑ワォ!何という輝きだ!このメッキの質感を得るために真鍮ではなくスチールにしたんでしょう)
・ツルっとした未来的な脱凸凹フォルム。
・加工の難しい堅牢なスチール製ボディ。
・光輝く最高のクロームメッキ。
・時代の先端シャッタースピード優先AE
・機械の密度感・精密感・組立高精度感
・デッケルマウントでのクイックリターン機構
・フォクトレンデルの歴史伝統
等等
どれもがカメラオタクの琴線に触れる。
特に、優美な曲面を形成する上部軍艦部スチールボディ。
どうやって硬い鉄を割らずにこんなに深絞りできるのか?
M型ライカのプレス生産技術について、絶賛記事を読んだ事がある。ライカは柔らかい黄銅であり、難度はウルトラマチックの方が数段高いと推察する。
ライカの品の良い梨地クロームに対して、フォクトレンデルのメッキは燦然と輝く。その辺の安物メッキの薄っぺらい光とは異質の超ギンギラなのだ。これは写真ではダメで肉眼で見ないと伝わらない。
そしてなんと言っても、シャッター感触❗️
"シュコプゥォーン"(実は一瞬ですが)
という心地良いシャッター音と
カメラを支える両手のひらと指に伝わる連続する小いさくて柔らかい振動。
ああ。至福。
何回でも空シャッターが切れる。
このキモチ良さは、全てのカメラの中でベスト
NO.1と断言できます、ハイ。
眺め、弄び、シャッターを切る
それだけで酒が何杯も飲めるw
(↑セレン露出計に光を導くハニカムウインドウ、デッケルマウント部はシャッターと絞りの組み合わせが一目で判る、フォーカシングに連動する被写界深度指標など痺れるメカとローレットの加工)
▪️一方、
ネットで ULTRAMATIC ウルトラマチックを検索して出てくるのは、修理の話ばかり。あんまり使った話は聞きません。
いわく(複雑メカ)(故障しやすい)
(直すの大変)(修理費高い)
そうなの??
ワタシのウルトラは20年近く全く故障知らずで、心地よいシャッターを響かせました。
(もう次のオーナーの手に渡りましたけど)
なぜ20年も故障がなかったのかは、運が良かっただけなのかわかりませんが、故障評判流布効果で、怯えながらも快感を味わってました。
★では使用インプレを
【結論】を先に言えば
ブランド、ネーミング、デザイン、素材、質感、精密感、複雑メカ、伝説……
ありとあらゆるものが
カメラオタクのココロの琴線に触れ、シャッターの超絶キモチ良さを味わえる。
弄ぶことについては世界最高水準。
それに尽きます。
でも
あえてこのカメラを撮影に使用する意味はまるでない(なんじゃそりゃ)
だって使いにくいんだもんw
35ミリ一眼レフならウルトラマチックと同じ時代においても、普通のフォーカルプレーンシャッター機の優れたカメラがいくらでもあるのだから。
(全く撮影インプレになってないな)
【詳細抜粋】
ツルッとしたデザインのボディーは手にひっかかるところがまるで無い。デザイナーはひたすらに凹凸のないサーフェイス美だけを求め、握り易さは無視した模様w
そのままでは、すべる。落とす不安…。
吊り環すらないのでストラップも付かない。肩や首に吊り下げるには純正専用革ハードケースがマストである。探してでも必ず買い求め無ければならない。
これが美しいデザインをスポイルする矛盾w
なんで美しいボディを隠さなければいけないのか。
(↑ストラップを付けるには専用のケースが必ず必要です。もちろんケースを外さなけりゃフィルムチェンジは出来ない。)
ファインダーは倍率も視野率の低い。おそらく複雑メカとのスペース取り合いでペンタプリズムが小さいからだろう。それでも明るい視野を狙った、マット無しの素通しファインダー。ピント合わせはセンター部のマイクロスプリットのみであり、同時代の日本製SLRファインダーに大きく劣る。スクリーン交換は出来ない。
シャッタースピード、絞り値はレンズ部指標をファインダー別窓からの光学表示。シャッター優先オート時は絞りは指針でも示すから、覗きっぱなしでも全ての撮影情報が得られるのは画期的だ。
この時代において、先進のシャッター速度優先自動露出を実現させた、スペックは凄い。
だが実用ではハッキリ言って平均的な照度の順光時しか当てにはならない。
厳しい条件下だとセレン式受光システムの針がふらふらと動き、AEのままお任せで撮ると露出許容範囲の狭いカラーリバーサルなどでは酷い目に会う。(時代的に最初からカラーフィルムは眼中になしか)
したがって露出計のクセを充分に把握して測光した上で、マニュアル設定をすることがお作法となる。
★標準レンズ
さてゼプトン50mmである。
(ずばり7枚玉を示すガウスタイプの50mm)
造りは美しく、まさにウルトラマチックにふさわしい風格のレンズだ。アルミ鏡筒の精密な加工、しっとりとしたヘリコイドの隙間の無い操作感(ライカと同じ様に同時代の日本製レンズのグリスで誤魔化された感触より上)、被写界深度指標がフォーカス連動するメカ(ハッセルブラッドでお馴染み)も泣かせる。
では、ゼプトンの写りはどうか?
ネット、古レンズグルメ評では絶賛話?
そうなのか?
ワタシが思うに、えーと。至ってフツーですw
普通に良く写りますよ。でも
ことさらコレという飛び抜けて優れてるポイントをワタシは思いつかない。
むしろ個性というか、カラーフィルムで使うとあんまり色が冴えない感じ。色が渋く濁る?おそらく内面反射が多いのではないかな?
少なくとも本気のカラー対応ではないし、逆光にも弱い。(バラツキ、ハズレ玉かなと、別の一本も試したけれど同じだった)
レンズ枚数が少なくヌケの良いスコパーの方が、カラーも良く、コントラストも高いので気楽に使える。
これはデッケルマウントによる設計制約のせいの気がする。後玉径を小さくしなきゃいけないので、7枚玉にして明るさを稼いだものの無理があったのでは?むしろフォクトレンデルレンズ部門はここまでよくやった!のではないかな。
40mmのスコパゴンも明るいけど、とてつもなくデカいし。
(↑シンクロコンパーは信頼できるシャッターですし、このシャッターマウント機構自体がまた精密ですが、一眼レフ・レンジファインダーカメラの共用マウントってのは無理があったんじゃね)
★不合理の積み重ねを技術で克服した怪物
やはりデッケルコンパーマウントを採用したというのが、スタートからのそもそもの失敗ではないのか?
この時代においても誰が見たってフォーカルプレーンシャッターの方が簡単でしょ。(デッケル社というのは、ドイツコダックも巻き込んだくらいだから、当時相当の政治力があったのかな)
その"始めの間違い"(政治的な思惑の悪しき結果?)による不可能を、技術でねじ伏せるフォクトレンデルのいつものパターンの典型。技術的冒険が止まらない社風。
技術でねじ伏せた結果、新たなに生まれた問題を、さらに技術で克服する事をドイツ的偏執でやり続けた末に、至高のウルトラマチックが誕生したのだろう。
でもさ、その間違いが無ければ、こんな個性的な怪物ウルトラセブンは生まれず、平凡なカメラになったかも。いやいやフォクトレンデルだからそれは無いか。
【まとめ】
前述したように、ワタシのピカピカのウルトラは20年間壊れなかった。
常時強烈なテンションがかかりっぱなしの部品があるため「動かさないと、使わないと壊れる」と言われた。さりとて使いやすくは無い。
イジるのは愉しいので毎月、欠かさずシャッターを切り続けた。
写真を撮るためにカメラを持ち出すのではない。
このカメラをいじりたいために写真を撮る。
当然たいした写真じゃないw
だからそのうち空シャッターが増えるww
"シュコプゥォーン"❤️