通称"ブラックニコン"


Nikon F  ブラックペイント

(アイレベルファインダーモデル)


(映画「マディソン郡の橋」でのイーストウッドのペンタ部だけ白のいわゆる幽霊仕様のF+F36)


 ニコンFは、1970年代初頭の販売終了まで

間違いなく至高の一眼レフだった。

 そして唯一のプロフェッショナル機であった。

(70年にCanon F-1が発売され本気のプロサービスに力を入れはじめたが、まだプロの信頼に足るものとはなっていなかった。キヤノンとのガチのプロ機勝負はF2 時代からではないかな)

 F が欲しかった。


しかし、他社一眼レフの2割高の定価。さらに他メーカー品が問屋で定価の25%引なのに、ニコンは定価販売で一切値引き無しだ。実質4割も高いのだ。とても手が出ない。

おまけにブラックペイントは注文品割増ときた。


(ヨドバシ[当時は淀橋写真商会]の黄色い価格表でもニコン製品は✖️表記、店頭でニコマートは5%引でなんとか買えたが、Fは在庫がなかった。レンズも同様で35/2.8や135/3.5は買えたけど135/2.8はヨドバシで買えなかった。多分、わずか5%でも一般に値引き販売しているためのニコンからの出荷停止だろうと推測された。数年後、ニコンが公取に✖️✖️ダメヨされるまでそんな感じだった)


Fをあきらめるしかなかった。


  そんな訳でワタシの最初の一眼レフは、ミノルタSR-1sとなった。でも

 それはそれでミノルタとの幸せな蜜月写真生活ではあった。

 ミノルタは素晴らしいカメラだし、

実質ニコンでなければならないことなど皆無であったしね。


 ところが10数年後、ある事故で愛機ミノルタが丸ごと水没してしまったことが転機になった。


アタマに浮かんだのは、あのブラックニコン。


今なら買える。

Fを買うぞ。


その時は、もうニコンF3の時代だったが、黒Fしか眼中になし。

それも運良くF36モータードライブとセットの新品同様を見つけ出して購入した。


 このモータードライブは、ボディ加工しなければ付けられない代物で、しかもシャッターと巻き上げの連動すらお約束ごとの沢山ある、メカメカしい代物。つまり電気的連動以前だ。


 F2モードラの強烈に喧しい巻き上げ音やF3モードラのいかにも精度を感じる軽い高速音と違って、F36のどこか牧歌的な機械音が好きであった。


Fは、まさしく日本光学の推を極めた機械、ザ・マシンだった。


 ただワタシが手にした時は既に発売終了から10年以上も経過。中古ということを差し引いても、流石にその時代の最新鋭F3に比べて剛性で劣り、機械的な遊びが大きい感じがした。

でも、そんなことは問題じゃない。


 ワタシは、そのある意味のユルサと道具感、温かみのあるブラックペイントをついに手に入れたのだった。

(この画像は愛機ではなく拝借画像です💧)


このFは20年くらいしっかり働いてくれ(何回もニコンサービスでメンテを受けた金食い虫)たあと、熱心なニコンファンの元に行ってしまいました。いつも別れはちょっとつらい。


★この時代の機械について今更ながら感じるのは、クルマなんかもそうだけど、生産、製造技術の未熟さを覆い隠す、いい意味でのユルサ、あるいは機械的なアソビですね。

 図面通り部品をキッチリ作ってしまったら(作ったつもりでも図面通り出来てないから)、ギチギチになって動かない。そうなる事を見越して設計で適度なアソビを入れる、現場の知恵で調整する、グリスで護摩化す、メンテ職人の技量が支える。それが絶妙なのね。


古き良き時代の名機よ、さらばじゃ。