寝起きの第一声が毎度トンチンカンだった6歳の頃のジョジョ。
満面の笑みで「アイス!」だとか「アンパンマン!」だとか「タクシー!」だとか。
起きがけにアイスを食べたいということなのか、タクシーに乗った夢でも見たのか。
いつかはジョジョの口から「おはよう」を聞きたいと密かに心待つ母だった。
さて年長組の秋以降、ジョジョに言語の第一次成長のビッグウェーブが訪れた。
興味のある言葉の吸収とそのアウトプットが急激に増えたのである。
とはいえ、冒頭の「アイス」「アンパンマン」「タクシー」など一部の単語を除き、
言葉の最初の音だけをひたすら羅列してくるジョジョ。
普段から接している人以外にはまったくもって解読不能。
例えば、
「ぐー ちょうだい!」
「たっしー まままー ほー」
「ぐー さー」
暗号のような言葉の嵐。
これを訳すと
「グミ ちょうだい!」
「保育園のたけし君とマキ先生」
「サイゼリアのグラタン」
「ちょうだい」や人名である「たっしー」「まままー」以外は
文章の繋がりを想像しながら推理していくしかない。
「今日は保育園でたけし君とマキ先生と遊んだの?」
「サイゼリアのグラタンを食べたいの?」
こんな風にジョジョの反応を見ながら、どうにか会話らしくなり。
その進歩は素直に嬉しかった。
けれども「あー」の発語だけでもジョジョが意味する言葉があまりに多く
なかなかジョジョが伝えようとしている単語を探してやれないという厄介な面も。
まったく頭が回らない時にジョジョ語の奇襲攻撃に遭うと
推察する余裕がないため何を言っているのかちんぷんかんぷん。
唐突に「いー ちょうだい!」と言われても「イカ」なのか「イチゴ」なのか「色鉛筆」なのか。
考えうる言葉を片っ端から羅列していく父母。
言葉の意味を言い当てられると笑ったり頷いてくれるのだが、時としてそのゴールが果てしない。
そんな折、さらにジョジョに大きな変化が。
名詞に続き、動詞も口にするようになったのだ。
これまで「ちょうだい」「やって」「ねんね(眠い)」だけだったが
「行く」「脱ぐ」「並べる」「見る」「会う」「遊ぶ」「食べる」「泣く」
といった動詞をやはり頭文字のみで表現するようになった。
ますます混迷を極めるジョジョ家のコミュニケーション。
そしてあれよあれよと三語文を経て、四語分以上の文章で出来事を伝えられるように。
こうなると更に翻訳作業はてんやわんやである。
「くつー ぼうしー こー いー しゅー やー どー ポイ!」
この暗号文を日本語に変換すると
「靴履いて帽子被って公園に行ってね、滑り台やってどんぐりをポイして遊んだよ。」
こんなにも園での出来事を語ってくれるようになり、感激の父母。
しかし事前に先生からの連絡帳を読んでいるからその内容が汲めるものの
先生からの前情報がないと何を伝えようとしているのかさっぱり分からない。
加えて、動詞には過去形とか現在進行形とか、難解な問題が孕んでいる。
「会う」という動詞を例にしても
過去形の「会った」なのか願望を表す「会いたい」なのかで意味は大きく変わる。
そして現実に体験した記憶なのか単なるジョジョの願望なのか、判別不可なケースも多く。
まさに言語習得の過渡期に立つジョジョとその家族。
それから月日流れて、小5のお正月。
急に「あけましておめでとうございます」と言うものだからびっくりである。
たどたどしい発音ながら、しっかりそう言ったジョジョ。
第二次ビッグウェーブの訪れだった。
緩やかなカーブの成長曲線というより、唐突な階段型の成長だろうか。
それを機に、あらゆる言葉や文章をスラスラと口にするように。
格段にコミュニケーションがスムーズになり、万々歳!と思いきや、思わぬ弊害もある。
ところ構わず、自分の言いたいことを叫ぶ多弁ぷり全開なのだ。
相手の都合などお構いなしにひたすらしゃべり倒すようになったジョジョ。
空気を読んで欲しい電車や病院の待合室、朝の静かな住宅街などでもひたすら捲し立てる。
彼にはまだ「小さい声で」というテクニックはないようだ。
公園で幼子がアイスを食べていようものなら、13歳のデカい図体のジョジョが
「アイス!アイス食べたい!アイス食べたーい!!」と野太い声で人目も気にせず叫ぶ。
毎度、新たな公開処刑を受ける父母だった。笑
さて、第三次ビッグウェーブはいつだろうか。
