昔、東映のヤクザ映画で、松方弘樹がいいとか、やっぱり菅原文太だとか、中には、成田三樹夫のニヒルさと情けなさにはかなわないとか、本当に個人的な思い入れで、俳優を応援する雰囲気みたいなものがあったのだ。
ふるっ!昭和やわー。
しかし、そんな楽しみ方が「新宿スワン」にも当てはまるのだ。
まず監督が園子温。
バイオレンスを描かせたら一品のこの監督が、裏社会である水商売のスカウト会社の内実や抗争を描く「新宿スワン」の監督をしているのだから、面白くないわけないのだ。
ヤクザ映画で言えば、深作欣二みたいな存在?
この映画の暴力溢れるアクションは、銃の出るシーンは多くないものの、人間同士の殴り合い、ナイフによる渡り合いのシーンが多く、それだけにリアルで生々しい。
また俳優陣が豪華なのである。
まず、主役 白鳥龍彦演ずる綾野剛、その敵で秀吉役の山田孝之、新宿でくすぶっていた龍彦を拾い上げる真虎役には伊勢崎友介、その彼が所属するスカウト会社バーストの社長に豊浦功補、その幹部 関には深水元基、時政に村上淳、バーストの競争相手ハーレムの社長には安田顕、幹部葉山は金子ノブアキ、龍彦の仲間の洋介に仮面ライダーシリーズに出てた久保田悠来、ヤクザの組長 天野役の吉田鋼太郎、キャバレーのマダムの山田優や龍彦を密かに王子様になぞらえ、生きる望みを求めながら、覚醒剤に溺れてしまう風俗嬢アゲハに沢尻エリカと、名前を書いてるだけで、嬉しくなってしまいます( ^-^)/:★*☆
ストーリー自体はご存知の方が多いだろう。
あえて事細かに解説するのも冗調というもの。
なので、ざっくりとここは流書き。
新宿でくすぶっていた龍彦。真姫に拾われ、水商売のスカウトマンに。
とにかく、喧嘩は強いが、根は単純な青春野郎の龍彦、本気でスカウトした女の子を幸せにすると奮闘の日々。
でもまだ使いっ走りですからねー。
ある時、幹部の関からハーレムの縄張りでスカウトしろと命じられる。バーストがハーレムを吸収する作戦の中の人身御供みたいなものだ。
何も知らない龍彦は言われた通りスカウトし、お決まりのようにハーレムのスカウト達にボコボコにされてしまうのだ。
その時後ろにいると思った関の姿はなく…。
で、身内を怪我させらせたこと諸々をネタに、プラスハーレムの社長が借金があることを逆手に取って、バーストの山城社長は買収話を持ちかける。
また、ハーレムの面子を保つため、龍彦は本当の人身御供になってしまうのだが。
しかしすんでのところで真虎の策略で、龍彦は助かり、ハーレム合併も達成される。
合併後、スカウトの成績が良かった者を幹部にするという山城の提案により、競争が始まる。
そんな中、手下の暴力や金を使って、他のスカウトを買収し、急激に成績を上げるのが秀吉である。
しかしなんでそんなに金があるかというと、隠れて覚醒剤の売買をしているからだった。
彼の狙いは、バーストの幹部になること、ではない。新宿を自分のものにするという野望を持っていたのだ。
で、秀吉がシャブを売ったアゲハと龍彦の出会いがあったり、龍彦がスカウトした女の子の自殺により龍彦が落ち込んだり、ヤクザの天野に対しての示しをつけるため、山城達が秀吉を追い込もうとしたり、実は秀吉と龍彦は同じ中学で、友達のいなかった秀吉は龍彦を羨み、龍彦の親友をナイフで刺してしまっていたり、ラスト近くで龍彦と秀吉のなぐりあいのケンカがあり、とことんまで殴り合ってお互い何となく理解し合うというような妙にさわやかなシーンがあったり。
話や印象のあるシーンはたくさんあるのだが、キャラでいうと、個人的に好きなのは、関、時政、そしてアゲハの働く風俗の店長である。
まず店長。
こいつも覚醒剤中毒、なので行動がまともでないし、狂気を正当化しているところが怖い。
働き詰めの風俗嬢が休みたいとか、辞めたあなんて言おうもんなら、女の子なんて関係なく、殴る蹴るのやりたい放題。
「誰のおかげで借金なくなったと思ってんの!悪いこと言ったらおしおきするのは当然だよねー」なんて言いながら、座った目つきで、一向に辞める気配を見せない 様子がうますぎる。
またアゲハが覚醒剤をしてることを気づいた龍彦がアゲハを助けるため風俗店に乗り込んだところ、アゲハと店長が同じベッドで覚醒剤にふけってるシーン。
この時の店長の朦朧ぶりがなんとも言えず怖くて、ほんまもんちゃうの?と思ってしまうくらい、演技が上手いのだ。
次に時政。村上淳演じるこのキャラは、いつもグラサンで決めて、寡黙である。
しかし、喧嘩は滅法強いのだ。
龍彦なんかはかるくのしてしまう。
関や真虎のような派手さはないものの、忠義に厚く、山城が天野に秀吉の件を釈明に行く時も、時政が同行している。
この映画で描かれてる山城は、ちょっと浮ついた印象があり、社長、集団の長としては不安定なところがたくさんあるのだが、それを陰ながら支えてるという印象が最も強いのが、この時政である。
案外、バーストのNo.2は彼なのかもしれない。
渋み、いぶし銀、主役ではなく、あくまでもバイプレーヤー、裏方に徹する素敵な男である。
そして、関。
バーストの武闘派と呼ばれるこの男を演じるのは深水元基。彼自体が身長185cmを超えていて、端正な顔立ちの割には、そのガタイから、荒っぽい役柄が多く、まさに関にうってつけ。
とにかく争いごとが好き、先述した通り、龍彦を利用して、ハーレム合併を画策したのも彼だし、秀吉の覚醒剤売買の有無を確かめるため、自分の女を秀吉の息のかかった風俗店に潜り込ませたりと時政とは対照的なキャラである。
時々ホテルの窓ガラス前で女とセックスにふけるシーンや、大勢を相手に乱闘するシーンなど、豪快かつストレートで、見ていて一番楽しいのは関だろう。
しかし、真虎のような頭の良さがないため、酷い目にあったりもする。
自分のの女がボーリング場で、秀吉たちが薬の取引を行うといえば情報を掴み、待ち構えいたのはいいものの、反対に秀吉にその動きを察知されていて、罠にはまってしまうのだ。
秀吉の仲間でケンカに強い奴とのタイマンには勝ったものの、自分の女を人質に取られてしまう。そして、レーンのピン位置に這いつくばった状態で固定され、セミプロ級の腕前という、秀吉のボーリングの餌食になってしまうのだ。(関の顔面にボーリングの玉が容赦なく当たるってこと!)
だが単純であるからこそ、愛すべきキャラなのである。最初酷い仕打ちをした龍彦に対しても、後々、からかいも入りながらも、暖かな感じで受け入れてるし、山城に対しての忠誠心を持ってるところも含めて、懐の大きな男気のある男なのだ。