本日は、コンクリートのお勉強をしましょう。

レベルはコンクリート技士・主任技士、技術士1次レベルの内容です。

施工管理技士、建築士を目指す方も是非!

 

混和材料の定義

混和材料についてのわが国での公的な定義は,JIS A0203(コンクリート用語)に「セメント、水、骨材以外の材料で、コンクリートなどに特別の性質を与えるために、打込みを行う前までに必要に応じて加える材料。」と定められています。

 

混和材料の種類と区分

混和材料は主として添加量の多少によって混和剤と混和材に区分されています。

この区分には必ずしも明確な境界があるわけではありませんが、JIS A0203(コンクリート用語)では、「混和材料の中で、使用量が比較的多く、それ自体の容積がコンクリートなどの練上がり容積に算入されるもの。」を混和材とし、「混和材料の中で、使用量が少なく、それ自体の容積がコンクリートなどの練上り容積に算入されないもの。」を混和剤と定義しています。また、「主として、その界面活性作用によって、コンクリートの諸性質を改善するために用いる混和剤。」を化学混和剤と位置付けています。

一般的には混和剤には有機質のものが多く、混和材には無機質のものが多いといえます。

 

ここまでは教科書に書いてある内容であります。

 

混和剤の歴史を紐解いてみましょう。

コンクリートまたはモルタルに混和剤を加えて,空気を含ませたり、プラスチシチーを改善したり、する考えとしては、紀元前から石灰 モルタルに豚脂を混和した例があり、ローマ時代にはコンクリー ト中に牛の血や脂、牛乳、小水の類を混和していたと言われている。

しかし、1824年にボルトランドセメントが発明されてからは、コンクリートの練りまぜの際に混和剤,とくに有機物の混入はタブー視され顧みられなかった。その後,1930年代に、アメリカにおいて偶然の機会からAE剤の効果が確認されて、混和剤の普及が始まった。

 ここで、アメリカと我が国の混和剤の歴史の流れを探ってみると次のようである。

アメリカにおける混和剤の歴史

1930年代,アメリカでは、凍結融解の繰返しや融氷剤によるコンク リート舗装版のひびわれや剥離防止に苦慮していたが、ボルトランドセメントと天然セメントの混合セメントを使用した舗装版に被害 の少ないことが、偶然確認され、また、その原因は天然セメントの粉砕助剤として用いた油脂にある と考えられた。

 

この内容についてはコンクリートの参考書によく書いてある話です。

更に掘り下げてみましょう。

 

PCA(アメリカ ポルトランドセメント協会)における粉砕助剤の研究から、牛脂、松脂、ステアリン酸等を成分とするものが粉砕効果を高めるとともに、コンクリートの凍結融解に対する抵抗性 を著しく高め、ワーカビリティーを改善することが判明した。

 

その後、コンクリート中に適度の空気量が得られるよ、これらの粉砕助剤を添加したAEセメントに 発展し、続いて、コンクリートの練りまぜの際に添加剤の使用量を増減して適度の空気量が得られるよう練りまぜ水に添加する水溶性のAE剤として発展していった。

1944年にはASTMに「AEボルトランドセメントの標準モルタル試験」が制定され、その後、AEコ ンクリートならびにAE剤について規定が作られた。

 

一方,AE剤 とほぼ同時期にサルファイトパルプの排液をコンクリートに添加すると、コンクリートのワーカビリティーの改善や強度,耐候性の増進などに優れた効果のあることが認められた。

その後、リグニンスルホン酸塩の作用に関する基礎的研究により、作用機構、効果等が明らかになるにつれ、各種の減水剤が研究され、集用化されるようになった。

 

1960年代に入ると、メラミン樹脂系やナフタリンスルフォン酸塩系の界面活性剤が出現し、これらの化学混和剤は従来では考えられなかった高減水性を発揮したため、高性能減水剤と称され第三世代を構成しました。そして、これら高性能減水剤のスランプ保持性を更に高めた、まさに第四世代とも言うべきポリカルボン酸系高性能減水剤が出現し現在に至っています。今では、日常的に高流動コンクリートの施工が行われていますし、シリカフュームなどと組み合わせることによって鋼材と変わらないくらい高強度のコンクリートを作ることも可能になっています。正にこれら界面活性剤系統の化学混和剤の出現により、コンクリート技術は飛躍的な進歩を遂げたと言っても過言ではありません。

 

もちろん、セメントとの反応や水和物形成の面でコンクリートの品質を改善する混和材の分野でも、膨張材、エトリンガイト生成による高強度混和材などの開発から、最近では、マイクロシリカフューム、微粉末スラグなどの利用技術が進み、従来にはない超高強度やコンクリートの高性能化が実現されつつあります。

 

近年の混和材料の発展には日を見張るべきものがあり、従来のコンクリートでは考えられなかったような特殊性能や高度な性能をもつコンクリートが実用化されつつあります。コンクリートの種々の要求性能を改善する混和剤が次々と開発され、防錆剤、超遅延剤、増結剤、収縮低減剤、水和熱低減剤、耐寒防凍剤、浸食性物質吸着剤、等々、その種類は枚挙に暇がありません。

 

これらの混和材料は従来の施工方法を革新させたり、これまで不可能であったコンクリート構造物を実現させたりもしているのです。今やわが国はコンクリート混和剤の開発利用の面で世界のリーダー的存在になっていると言っても過言ではありません。これらは、コンクリートに対する要求性能の多様化と高度化という社会のニーズや、土木建築技術者の要求に応える材料メーカー・研究者の不断の努力によって成しとげられたものですが、先にも述べたとおり、今後も新しいニーズの発掘とそれに呼応する技術開発により、混和材料とコンクリート技術はますます進歩発展して行くものと期待されています。

 

では本題に進みましょう。

 

化学混和剤を用いたコンクリートの性能品質JIS規格

JISに規定されている化学混和剤は7種類で、・AE剤・高性能減水剤・硬化促進剤・減水剤・AE減水剤・高性能AE減水剤・流動化剤である。

また、減水剤、AE減水剤は、標準形、遅延形、促進形があるが、高性能AE減水剤、流動化剤は、標準形・遅延形の2種類で促進形はないことに注意すること。

 

ここで注意をして欲しい減水率は、減水剤が4%以上であり、AE剤が6%以上である、AE剤のほうが、減水率が大きい。

 

また、AE減水剤は、AE剤と減水剤の効果を持っているので、減水率は6%+4%=10%以上となる。

高性能AE減水剤は、AE減水剤の減水能力をさらに向上させたものであり、AE減水剤の減水率10%の約2倍で18%以上となる。

 

まとめてみよう。

① JISには「硬化促進剤」と「流動化剤」には減水率が規定されていない。

 

② ブリーディング量の比が規定されているのは、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤の3種類であるが、減水剤」は遅延形のみ規定されていることに注意する事。

 

③  流動化剤は「ブリーディング量の比ではなく、ブリーディング量の差が規定されていることに注意する事。

 

④ 凝結時間の差は、硬化促進剤には規定されていない。

 

⑤ 圧縮強度比は基本的には材齢7日、と28日で規定されているが、硬化促進剤は、材齢1日、2日、28日で規定されている。

 

⑥ 凍結融解に対する抵抗性が規定されているのは、AE効果のある混和材は、AE剤・AE減水剤・高性能AE減水剤の3種類と流動化剤である。

 

⑦ スランプと空気量の経時変化量が規定されているのは、高性能AE減水剤、流動化剤である。

 

⑧ 混和剤の品質はスランプ8 cm について、混和剤を用いない基準コンクリートと試験の対象とする混和剤を用いたコンクリートとを比較することによって判定する。

 

⑨ 高性能AE減水剤は、スランプ 18cm のコンクリートについて、スランプおよび空気量の経時変化量を試験する。

 

⑩  流動化剤の試験は、スランプ 8cm のベースコンクリートにスランプ 18cm になるように流動化剤を添加し、ベースコンクリートと流動化コンクリートの各種性能を比較する。

 

⑪ 混和剤中の含まれる塩化物イオン量および全アルカリ量は、コンクリート1㎥中の混和剤について計算によって算出する。

 

続いて混和材の大本と言える混和剤のAE剤についてを学習しましょう。

 

AE剤は、コンクリート中に多くの独立した微細な空気泡(エントレインドエア)を一様に連行し、ワーカビリティーおよび耐凍害性を向上させます。 また、エントレインドエアは球状でそれぞれが独立して均一に分布しています。

良質なAE剤では、直径が 30~ 250μmで、コンクリート1㎥中に数千億個含まれています。

混和剤を用いないでも 1~ 2%の空気量が含まれていますが、この空気泡はエントラップトエアと呼ばれ、比較的粗大で形状も不整な状態です。

一般的に空気量が 2%以下では耐凍害性の向上には効果がなく、6%を超えると強度低下や乾燥収縮が大きくなります。

連行空気(エントレインドエア)は、コンクリート中であたかもボールベアリングのような作用をするので、ワーカビリティーが改善され、所要のコンシステンシーを得るための単位水量を減少させることができます。

 

これが教科書に記載されてる説明です。

では、留意点をあげてみましょう。

① ブリーディングなどの材料分離が少なくなる。

 

② 圧縮強度は、空気量の増加にほぼ反比例して低下する。

 

③  凍結融解の繰返し作用に対する抵抗性(耐凍害性)が著しく増大する。

 

④  連行空気量は、AE剤の使用量に比例してほぼ直線的に増加する。

 

⑤ セメントの粉末度が大きくなると空気連行能力は低下する。

 

⑥ 単位セメント量が多くなるほど、空気連行能力は低下する。

 

⑦ 細骨材量を増すと、空気量も増加する。

 

⑧  細骨材のうち、0.15~0.6mm の部分が多いと空気泡は連行されやすく、0.15mm 以下の部分が多いと空気泡は入りにくい。

 

⑨ コンクリートの練上り温度が低いほど空気量は増加し、温度が高くなると減少する。

 

⑩ フライアッシュに含まれる未燃カーボンがAE剤を吸着するため、未燃カーボン量が多いフライアッシュを使用するとAE剤の使用量が異常に増大することがある。

 

⑪ 回収水中のスラッジ固形分が多くなると、AE剤の使用量が増大する。

 

⑫ 軟練りコンクリートは硬練コンクリートより空気量は多くなる。

 

以上が留意点であります。

次に、凍害防止にAE剤が何故有効であるかを考えてみよう。

 

AE剤の凍害防止機構ついて

コンクリートにAE剤を使用する最大の目的は、凍結融解に対する抵抗性の向上とワーカビリティーの向上です。

 

凍害はコンクリート表面の温度が下がって、表面に近い所の水分が凍結した状態ですが、ご存知の様に水は凍結すると10%近くも体積が増加して大きな膨張圧を生じます。

この圧力は内部に向かうわけですが、近くに気泡があると、まだ凍結していない自由水を介してこの圧力を逃がすことが出来るのです。

更に水分の凍結が内部に進行しても同様の現象が繰り返され、コンクリートは膨張圧による破壊を免れます。

このように、コンクリート中の連行空気泡は自由水の凍結による大きな膨張圧を緩和する働きをするため、凍結融解の繰返し作用に対する抵抗性(耐凍害性)が飛躍的に増大するのです。

 

その他の混和剤についてもふれておきましょう。

 

減水剤・AE減水剤

減水剤は、電気的な反発作用によって集塊状になったセメント粒子を分散することにより、セメントペーストの流動性が増大します。

また、コンクリートのワーカビリティーが向上し、所要のコンシステンシーおよび強度を得るための単位水量、単位セメント量を減少させることができます。

 

まとめると、AE減水剤は、セメントの分散作用と空気連行作用を併有する混和剤である。また、材料の分離傾向が減少する。

混和剤を用いないコンクリートと同一の強度を得る場合、単位セメント量を 6~10%減少できる。

 

減水剤およびAE減水剤の分類

減水剤、AE減水剤は、セメントの凝結速度をコントロールすることが出来るので、それぞれ遅延形、標準形、促進形の3種に分類され、更に塩化物イオン量により更に3種類に分類されています。

AE剤にはこのような分類はありません。

 

 

コンクリート温度20℃の時を標準として、セメントの凝結の速度を早めるものが促進形、遅らせるものが遅延形です。

一般の市販品は、コンクリート温度10℃の時に促進形を使用し、コンクリート温度30℃の時に遅延形を使用すると、それぞれコンクリート温度20℃の時と同程度の凝結時間に調整することが出来ます。

ただし、促進形はコンクリートの凝結促進効果よりも初期強度発現の促進効果が高いので、低温時における初期強度の発現や型枠存置期間の短縮などを目的として使用されています。

 

各種コンクリートに推奨されるAE剤・減水剤・AE減水剤を整理すると下表のようになります。

 

 

高性能減水剤

高性能減水剤は、単位水量を大幅に減少させるか、又はスランプを大幅に増加させる事ができる。

また、使用量を増加することにより、減水性が向上するが、使用量を増加しても過剰な空気連行性や異常な凝結の遅延性がないため、単位水量を大幅に減少でき、高強度コンクリートの製造が可能となる。

特色

・ 20%~30%の大幅な減水効果が容易に得られる。

・ 粉末度の高いセメントほど減水効果は大きい。

・ 富配合ほど減水効果は大きい。

・ 高温時ほど減水効果は大きい。

・ 特殊な養生を行わずに 60~100N/mm2 の高強度を得ることができる。

 

高性能減水剤のセメント分散機構

高性能減水剤はセメント粒子の表面に吸着し、静電気的反発力を付与することによってセメント粒子を分散させます。減水剤のセメント分散機構もこれと同じなのですが、高性能減水剤はセメント粒子に付与する静電気的反発力が桁違いに大きいので、セメント粒子はフロックを作ることが出来ず、殆どバラバラに成ってしまうのです。

高性能減水剤の成分

通常の減水剤はオキシカルボン酸塩やリグニンスルホン酸塩のように界面活性効果を持った天然物質が基剤として使われています。これらの物質の分子量は数百~数千程度です。これに対し、高性能減水剤に使用されている基剤はその殆どが工業的に作られる合成高分子化合物で、その分子量は万単位になります。高分子化合物はカルボキシル基やスルホン基と云った官能基の総数が多くなるので、セメント粒子に大きな電荷を与える事が出来るのです。

 

次は高性能AE減水剤です、余談ですが、土木の大規模工事で最初に使われたのが千葉マリンスタジアムであります。

(花王 マイティ 2000 現在のマイティ3000シリーズの前の製品)

建築の公共工事で一番最初に使われたのが、現在の高田馬場コーポラス 旧名新宿区営戸塚4丁目アパート新築工事です。

区なのに国の工事よりも早く採用するとは、凄いですね(笑)

(自画自賛ですが)

高齢者・身体の不自由な人専用公共住宅もこの案件が一番最初です。新宿区の営繕課は凄いですね。

お陰で毎週、地方議員、省庁の関係者、福祉施設から視察がきてスライドで毎回私が説明と案内役をしていました。

 

では本題に戻ります。

高性能AE減水剤

高性能AE減水剤は、高い減水性能と優れたスランプ保持性能を有する混和剤であり、一般の強度のコンクリートから高強度コンクリートや高流動コンクリートまで、幅広く使用されている。

高性能AE減水剤の主成分は、便宜上、ポリカルボン酸系、ナフタリン系、アミノスルホン酸系およびメラミン系の4種類に分類されている。

高性能AE減水剤の分散機構は、一般的に静電反発力と立体障害効果で説明されている。

静電反発力は、減水剤がセメント粒子に吸着するとセメント粒子表面に帯電層が生じ、粒子が互いに反発することによりセメントペーストの流動性が大きくなることで説明される。

その静電反発力の大きさは、ゼータ電位(ジータ電位ともいう)と相関関係にあり、ナフタリンスルフォン酸塩やメラミンスルホン酸塩は、ゼータ電位が高く分散性が大きいと説明されている。

一方、ゼータ電位が比較的小さいにもかかわらず高い分散性が得られるポリカルボン酸系の高性能AE減水剤の分散機構は、帯電層による反発力だけでは説明できないため、粒子間の静電反発力に加え、吸着層の立体障害効果によるものと考えられている。

 

高性能AE減水剤のスランプ保持機能は、セメント分散剤とスランプ保持剤を配合した剤およびそれ自身がセメント分散性とスランプ保持性を持つ剤の2つのタイプに分けることができる。前者は、時間の経過とともに溶液中の反応性高分子がセメント表面に吸着し、再凝集を防止すると考えられており、後者は、立体的にセメント表面に吸着し、長時間にわたりセメントの再凝集を防止すると考えられている。

 

次は、現場でミキサー車に添加する流動化剤です、夏場は自分もよく使います。ライオンのレオパックが使い勝手が良いですね。

 

流動化剤

 あらかじめ練り混ぜられたコンクリートにあとから分散剤を添加するとセメントの分散効果が増大する。流動化コンクリートは、この原理を巧みに利用したものであり、空気量が過大に増加しない高性能減水剤を主成分としている。

流動化剤は2005年度の改正でJIS A 6204に加えられた。

流動化剤は「あらかじめ練り混ぜられたコンクリートに添加し、これをかくはんすることによって、その流動性を増大させることを主たる目的とする化学混和剤」と定義され、土木学会規準ならびにJASS 5 T-402と同様の性能基準が定められている。

 

凝結遅延剤

凝結遅延剤は、コンクリートの凝結や初期硬化の遅延を目的とするものである。リグニンスルホン酸塩、オキシカルボン酸塩などを主成分とし、減水剤、AE減水剤、流動化剤ならびに高性能AE減水剤の遅延形のほかに、珪弗化物を主成分とし遅延作用だけを有する凝結遅延剤、従来よりも長時間の凝結遅延を目的としたオキシカルボン酸塩を主成分とする凝結遅延剤がある。

 リグニンスルホン酸塩やオキシカルボン酸塩は、セメント粒子表面に吸着し、セメントと水との接触を一時的に遮断することにより、初期水和反応を遅らせる。

 

混和材料についてはまた、詳しく載せます。

 

化学混和剤についてここまでです。