都会はうるさい。


足音、話し声、一年中終わらない工事の音。


遮断するかのようにつけたイヤホンからもアップテンポの音楽が流れる。


都会はうるさくて、時の流れが早すぎる。


電車に揺られ西へ行くと、気づけば静寂に包まれていた。


車掌が切符を切りに来るのなんて久しぶりに見た。


薄暗くなった窓の向こう側と、一人になった車内。


心がこんなに静かになったのはいつぶりだっただろうか。


『嘘笑い』で出演して頂いたタキ役の名田屋さんが地元の観光地を舞台とした短編映画に出演し、そのイベントがあったので山梨まで足を運んだ日のことだった。


到着したのは19時。凍える寒さで駆け込んだ駅前の建物には放課後の学生がいて、みんなして片手にスマホ。


都会から少し離れたこの地でもこの様子だ。


発展を感じながらも少し寂しい気もした。(その調子で僕たちのドラマも観てくれると嬉しいが。)


イベントに参加するといつものように元気な名田屋さんが迎えてくれた。


本当に良い人すぎる。


いろんな方を紹介してくれた。


短編映画の鑑賞会が終わった後のこと。


名田屋さんのファンの方々ともお話しさせて頂いた。


僕たちの短編ドラマ(嘘笑い)を観てくださった方が多く、そこで初めて視聴者の生の声を聞くことができた。


沢山褒めて頂けて、「感動しました」と言って頂けて、次の作品を期待してくれる方もいて、本当に嬉しかった。


自分の書いた脚本があんなに褒めてもらえて、大切な仲間の技術を褒めてもらえて、本当に嬉しかった。


握手を求められたのもなんだかとても新鮮だった。


画面越しで数字が少しずつ増えることでしか実感できなかったけど、こうして実際に頂く声がどれだけ力になるか。


「ファンの皆様のおかげです」と言うアイドルに共感してしまうほどだった。


僕たちの挑戦がまたひとつ形となった気がした。


まだまだ目指してるところからは程遠い。


テレビや映画、Netflixと比べてもまだ並べるレベルじゃない。


でもこうして誰かの心を動かせた。


応援してくれる人も少しずつ増えてきた。


これからだ。


まだ一年も経ってない。


もっと沢山の役者を巻き込んで、歌手を巻き込んで、企業を巻き込んで、できるだけ多くの人を巻き込んで規模を大きくしていく。


必ずアマチュアとメジャーを繋ぐ団体となって、役者の夢をサポートする。


それでいて沢山の方々の心を動かせる作品を作りたい。


絶対できる。


いつだって僕は一人だった。


学校でも、夢を追っていても。


『ドラマで役者や歌手の夢をサポートする』と決めた日からずっと突っ走ってきて、いつの間にか沢山の方に囲まれていた。


何一つわからない状態から助けてもらってばっかのドラマ制作がこうして形になった。


脚本の書き方すら知らない僕だったのに、僕の脚本で泣いてくれる方まで現れた。


一人の僕でも、何も知らない僕でも、仲間の力を借りてここまで来れた。


人は一人じゃ何もできない。


ルフィが一人でワンピースを取りに行くということほど無謀なことはない。


桃太郎が一人で鬼退治に行くという話ほどつまらない話はない。


一人だからできないなんて当たり前のこと。


『今できない』が、『この先ずっとできない』の原因にはならない。


これからも沢山の方の力を借りながら、沢山の方の夢をサポートして、沢山の方の心を動かしたい。


今の人生ほんと楽しいな。