『男の友情物語』


これが三作目のテーマだった。


そして三作目からは横画面で作品を作るということも決めていた。


今までは縦画面でTikTokなどに合わせて撮影してきたが、よりドラマ感のある制作となった。


「脚本を書く段階でできるだけ完成を想像しない方がいい。」

「0から1を生むのが脚本家の役目、その1を演出の力で10や100にするのが監督の役目だ。」


監督からそのこと教わったのは、この作品の脚本執筆中のことだった。


ドラマでは含まれているシーンが実は脚本にはなかったりする。


ドラマの現場ではわりとありがちなことらしいが、ド素人の僕は知るはずもなかった。


「1人の感性で作っていない」と実感した。


脚本家と監督の感性が合わさって、さらにカメラマンの技術でブラッシュアップされる。


そうやって色々な感性や知識、経験が混ざって【作品】は出来上がるのだ。


さて、撮影当日だ。


男の友情物語を撮影する。


カメラマン、監督、僕、スタッフも含め全員男。


むさ苦しい現場になりそうだ。

※現場BISCUSのオーナー(渚役の有川さん)からマイナスイオンをたっぷりいただきました笑


現場となるBISCUSに到着し、ドアを開けると台本の読み合わせをしている役者2人(ショウ役・タキ役)がいた。


彼らと会話してすぐに感じたのは《夢への熱》そのものだった。


目が違う。


彼らは、僕がサッカーで夢を追っていた時に周りにいた人たちと同じ目をしていた。


一気に期待値が上がった。


撮影中、NGが続いても現場がグダっとならなかったのは制作陣の熱もあるが、役者本人たちの熱もあったからだ。


役者同士が確認し合っているところは今までの現場より何倍も多かった。


監督からどんな指示を受けようが、どれだけNGが続こうが、決して目は死ななかった。


ショウ役のりたくんも、タキ役の名田屋さんも出演オファーに対して即決してくれて、りたくんなんて大阪からわざわざこの撮影のために来てくれている。


むさ苦しさの原因は性別だけではなかった。


そこは僕が作りたかった環境そのものだった。


2年前、僕が芸能界に入ってからずっと疑問に思っていることがあった。


僕がサッカーで夢を追っていた時の環境と、芸能で夢を追う人たちの熱量がどうも違う。


でもこの現場で確信した。


彼らこそ心の底から夢を追ってる役者なのだ。


サッカーも趣味でやってる人はいた。


ある程度のレベルに達したらその湯加減に満足する選手もいた。


芸能界だって同じだった。


そして【作品】はむさ苦しさがあって初めて成り立つ。


あって成り立たないことはあっても、無くて成り立つことはないんだ。


脚本家と監督の感性が合わさって、さらにカメラマンの技術でブラッシュアップされる。


そこに役者の演技があるから【作品】になる。

組み立てるのは裏方だけど、やっぱり視聴者の目に映るのは出演者なんだ。

彼らの熱があるから【作品】が生まれるんだ。

役者もカメラマンや監督と同じようにある種、職人でなければならない。

熱はどんな熱だっていい。

夢で無くても、お客さん・ファンの方々を考えるという熱や作品に対する熱、心の底から演じることが好きという熱だっていい。

ただ、熱を持たずに取り掛かったものはただの動画に過ぎない。

【作品】にするには特別な熱や想いが必要なんだ。

彼らより演技が上手い役者は当然いる。

今までの作品にもいたのかもしれない。

それでも『あの作品を観て涙を流した』と視聴者様から言って頂けたのは、演出もあるが、彼らの溢れんばかりの熱や想いが伝わったから。

『嘘笑い』の最後のシーンはショウ(りたくん)自身が表現した演じ方だ。

脚本の僕も、監督も、何も指示していない。

台本には「ドライブだよ」と書いただけ。

その一言が視聴者の心を動かす一言となったのは紛れもなくショウ(りたくん)のおかげで、その行動を起こさせたのはきっと彼の『熱』だろう。

夢への熱、作品に対する熱、何か学んで帰るという熱。

そんな想いがその行動を引き起こしたのだと思う。

彼ら2人の熱が僕の芸能人生にも大きな影響を与えてくれた。

だから恩返しがしたい。

僕らが大きな団体になって、彼らとまた作品を作りたい。

今はまだ小さな団体でも作品に込める想いはどこよりも大きい。

熱や想いである程度なんでも出来ちゃう世の中だ。

全然不可能じゃない。

大丈夫、きっとやれる。