・なんくる姉さん #1～5

「姉さん仕事です　シュミ抜きを！」

「あの人はどんな悪趣味を！？」

「あいつはおそらく…共産趣味だ」

「共産主義じゃなくて？」

「意見をコロコロ変えて主義まで至らぬ共産趣味者だ

思えばこの日本は主義まで至らぬ趣味者ばかり

民主趣味　愛国趣味　社会趣味」

「えーと　そのへんで　勝負しなくて良いところで勝負するのはコスパ悪いから」

（３巻P140-141）

「アイドルオタのレッテルを剥がすには、鉄オタになるしかなかったんだ」

「どっちも同じくらいクズじゃない！」

（５巻P81）

じょしらくのコンビが、ヤングマガジンサードに参戦。

周囲の目を気にするあまり「気にシーサー」という幻が見える大学生、木西一茶。コスパ主義者の妹・照代の不手際で共に家を追われ、とてもおおらかな女性・なんくる姉さんが管理人を務める「なだそう荘」の厄介になることに。そこにはとても自由な住民ばかりが住んでいて……。

編集部サイドとしてはアニメ化までにらんでいたと思いますが、あまり話題にならず今年の３月、５巻で連載終了。

姉さんのムチムチボディ以外余り印象に残らない作品でした。

ムチムチボディ（参照）

正直、主人公がひたすら勘違いを重ねていくのが痛々しくて、見ていられなかった。その都度ツッコミが入って思い込みがリセットすれば良かったものを、基本ツッコミがいないので、後半では一茶くん「姉さんは子どもが６人いる酷いＤＶ夫に先立たれた未亡人で、自分にプロポーズしてきて沖縄にも旅行したし（※実際は千葉）、新婚旅行で軽井沢にも行った（※実際は千葉）」ということになってましたからね。色々失調してないか？

あと青年誌ということもあるんでしょうけど、とにかく風刺がキツくて。

序盤で舞台が沖縄のイリオモテと見せかけて、埼玉県入間市のイルマオモテだったと明かされる展開があるんですが、実はそれが沖縄の米軍基地と入間の自衛隊基地を絡めた政治ネタにつながってくるんですよ。いやーきついっす。

なだそう荘で喫茶店をオープンするくだりは、タダで手伝ってくれる存在として中核派の皆さんが登場。「あとで一緒にシュプレヒコールしよう」と言われても、「それシャンパンコールみたいなものですか？」などと駄洒落未満のこじつけで一向に気づかない一茶くん。警察だか機動隊に追い掛け回されても「なぜだ？」で思考停止してしまう一茶くん。このバカが主人公ってどう考えてもミスだろ……。

読めば読むほど苦々しい気持ちになり、やはり姉さんのムチムチボディ以外積極的に忘れたくなる内容でした。最終回のすっきりとしたまとめ方は久米田康治だな、と改めて感心しましたし、この微妙な作風の変化を新境地という風に受け止め、心の底から楽しめる人もいるのかなとは想像いたしますが、自分は「かくしごと」の存在がなかったら、この人才能枯れたな、って思ったでしょうね。

なんくる姉さん（１） (ヤングマガジンコミックス)

Amazon

色々な意味で苦いぞ「なんくる姉さん」