※前作「2018」の感想はこちら

・我が妻との闘争2019 ありがとラッキーちゃん（呉工房）

嫁のパート先は個人病院なので、インフルエンザの予防接種も優先して予約を入れてくれるだろう。しかし嫁に受付をしてもらうのが照れ臭く、これまでは別の病院で済ませていた。それが今回、先生から「従業員のご家族も遠慮なく予防接種に来てくださいね」という話が出たらしく、お願いすることにした。

（中略）

「確かこのビルの３階だよな。ほほぅ、最近の病院の待合室には般若のお面が飾ってあるのか」

いや、あれは般若のお面などではなく、窓から私を睨みつけている嫁だった！

あの表情はなんだ？よく見ると、左手に持ったぞうきんで窓ガラスをふきつつ、右手で携帯電話を操作しているようだ。しばらくすると私のiphoneのメール着信音が鳴った。

「アンタ何を考えとるんじゃ！なんで上下ジャージ姿やねん！どないな神経しとんねん！受付にはニ十歳の若い子もおるんや。今日あんたが病院に来ることを話したら『呉さんのダンナさん、きっとカッコよくて優しい感じだと思う』って話題になっとるんじゃ。いますぐ家に帰って着替えてこい！」

ええーっ！いま、駐車場に車を止めたところではないか。駐車場代がもったいない。困った顔でおろおろしている私に、嫁は「その格好で入ってきたらシバく」という熱視線を強力な目力で送り続けていた。どうやら選択肢は「家に帰る」しかなさそうだ。

（「魔の予防接種」より）

前作に続いて、未単行本化エピソード６本と、書き下ろしの表題１本。

わりあいほのぼのしたエピソードが多目でしたが、これはこれでという感じ。ぼちぼち銀婚式って時期だろうし、流石にもう四六時中いがみあってるわけないよなあ？

でもやっぱり面白いのは前述の「魔の予防接種」でしょうか。家族ってめんどくさいねえ。メンツってめんどくさいねえ。

書き下ろしの「ありがとラッキーちゃん」はタイトル通り、愛犬・シーズーのラッキーちゃんが死んだことに対する思い出話。

巻末の解説に「マンガ版最終回で出てきた印象が強い」とあって、全くの同感です。「散歩のルートを変えてやると喜んだ」なんて話が情感たっぷりに書かれていて、やっぱり文章うまいなあって惚れ惚れしちゃうエピソードでした。

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呉エイジ「我が妻との闘争2019 ありがとラッキーちゃん」感想