大学生時代、最長となる2年4か月付き合った人がいた。
相手から告白され、こんなくだらない奴でも誰かに必要とされるんだと嬉しくなり、舞い上がった俺は付き合うことにした。
でもなんともいえない違和感があった。
デートが終わり、じゃあまたねと言った帰り際、振り返るといつも後ろ姿だった。
まぁ俺みたいな男じゃ仕方ないかと思いつつ、いつか手を振り返してくれるんじゃないかと願ってた。
小学生の頃から、ずーっと学校の先生になりたかった俺が、よし、あと数日で教育実習だ、と意気込んでいた頃とつぜん、
初めてそいつから返信が来ない日があった。
浮気されたと直感で分かった。
そして俺からすると浮気だけど、そいつにとっては本気なんだと直感で分かってしまった。
メンタルも教育実習もボロボロ・・・
教育実習という名の地獄が終わり、やっと会えた時、予想はドンピシャで当たっていた。
実習期間中、浮気は重ねられ、浮気相手は愛してやまない大好きな彼となり、俺は別れを切り出せずに居るただの男になっていた。
そいつとの話を聞いて、心が耐えられなくなった俺は、今日はもう夜も遅いし、またねとだけ言ってその日は帰った。
すると3日後、彼女の家電から、鬼のように電話がかかってきた。
なぜ携帯じゃないんだろう?と思い電話に出ると、彼女の母親からだった。
どうしても娘に会ってくれないかと。
あれから3日経って、別に好きな人ができたと母親には打ち明けられたんだと思った俺は、別れの時が来たと覚悟を決めて会いに行った。
すると家から出てきたのは母親。
俺を見るなり、3日間何も食べてくれないの・・・
お願いだから仲直りしてあげて?と言われた。
え?何も知らないパターン?と思った瞬間、
俺は悟ってしまった。
こいつが浮気しましたと、その場で母親に言えるはずもなく、この地獄には延長戦があることを。
会うと少し頬がほっそりとしたそいつに、プリンとヨーグルトを何とか食べてもらった。
帰り際、母親に手を握られ、いつも娘のためにありがとうね♫
と言われ、またきり出すことができなかった。
それから3週間、励まし続けると、
最後にデートに行きたいと言い出した。
変わり映えしないデート中、突然腕を組んできた。
ふだん人前で恥ずかしくて手も繋いでくれなかったそいつに驚いたが、
もっと驚いたのは、あっくん♫と呼ばれた時だった。
俺の名前に「あ」はつかないのにと思いつつ、
最後くらいスマートに終わりたかった俺は気付かぬふりをした。
最後くらいとそいつも気を遣ってくれたんだろう。
沈黙もなく、楽しい時間が過ぎたデート終盤、
おれは余計なことを聞いてしまった。
どうして俺に告白したの?
するとそいつは少し迷ったような表情のあと、
私のこと好きになってくれる人なんか、この世にいないと思ったから😃
と真っ直ぐな顔で伝えられた。
そうか、好きで告白されたんじゃなくて消去法か、と分かった瞬間、
悲しさや寂しさより、こいつの時間を2年以上奪ってしまったのかと思うと心苦しくなった。
一緒に居てくれてありがとう、さよならと言って背を向けると、
タイミングドンピシャで、中島美嘉のオリオンがかかった。
初めて別れ際に背中に視線を感じながら聞くオリオンに、涙が止まらなかった。