つまり、50歳の人間にとっての10年間は、5歳の人間にとっての1年間。
有名な『ジャネーの法則』だ。
子供の頃に感じていたワクワクしたりドキドキを受け取る感覚が擦り切れて、ものごとを考えることも、感じることもなく劣化していくだけなのだろうか。
そう考えると、恐ろしくなってくる。
年齢を重ねるほど時間がたつのが早く感じるようになるのは、本当だ。
だが、人生の経験値が上がっていくことで、子供だったころより、生きるのは今のほうがずっと、楽になっている。
私の思春期は『知覚過敏の歯』だった。
神経がむき出しで、どんなことにもピリピリしていた。
外部からの刺激が強すぎて生きているだけで、かなり消耗していたのかもしれない。
あの当時の自分に同情してしまう。
ジェットコースターに乗っているかのように過ぎていく日々の中で「しなければならない」ことは、うんざりするほどあった。
「こうでなければ、ならない」という鋳型があって、そこにハマらないと、叱られたり、責められたりする。
誰に叱られるかと言えば、学校の先生だったり、親だったり、見ず知らずの他人だったりするわけだ。さらに彼らは言う。
「人生の美しい時期は、あっという間に過ぎてしまうから、無為に過ごしてはいけない」
『日日是好』という禅の言葉がある
意味は、日来る日も来る日も、楽しくごきげんな毎日が続くこと。
どんなにいいことがあった日でも、どんな悪いことがあった日でも、穏やかに、一日一日を大切に過ごすといい。
クヨクヨして落ち込んでいたら、人生はあっという間に過ぎ去ってしまう。
だからといって、急ぐ必要はない。
ゆったりとした気持ちで、毎日を大切に過ごして、楽しいことをたくさん探すのだ。
感情はナマモノだから、ものごとの考え方や感じ方は、その瞬間瞬間で変わっていく。
子供の頃に初めて知った新鮮な驚きの感情も、大人になった今、あらためて、ゆっくりと味わうことができる。
どんなご馳走だって、大急ぎで食べてしまったら、味も分からない。
大切な時間を雑に扱わないように。
あわてないで、そっと、そっと……。

