「国旗・国歌法」が施行されて今年で25年目になりました。戦後、日の丸は軍国主義のシンボルとして、教育現場では掲揚されないことも多くありましたが、この法律により半ば強制的に掲揚されるようになり君が代も違和感なく唱和されるようになりました。

 

特に、国際的なスポーツの祭典であるWカップやオリンピックでは、巨大な国旗を観客席に広げたり、メダルを取った選手が国旗を体にまとうシーンが映像で流れたりして、国旗や国歌は観衆と選手との「絆」と表現されることも多くなったと思います。

 

かくいう私は、子どものころに入学式や卒業式で君が代を歌った経験がない世代で、戦時中の話を聞いていた世代ですから日の丸や君が代に違和感がありました。しかし、慣れと時間の経過というのは怖いものでだんだんそういった考えが薄れていっています。

 

しかし、今回は少し首をかしげてしまいました。パリオリンピックの壮行式が、選手ゆかりの土地や所属団体などで行われたという報道を最近目にします。東京オリンピック・パラリンピックで、サーフィン協議のホストタウンをつとめた静岡県下田市で、地元の中学生たちが大きな日の丸と星条旗に寄せ書きをして関係者に送ったといいます。この件に関し2つの点で違和感を覚えました。

 

一つは教育現場での国旗への寄せ書き行為。これは先ほども述べたように、軍国主義をほうふつさせるもので、いくらスポーツとはいえ行き過ぎた行為であると私には見えます。現場で違和感なく行われたのだろうか。思想・信条の自由の介入する余地はなかったのだろうか。

 

もう一つは、そもそも国旗に文字を書くという行為が、国際通念上 認められるかどうかという点です。国によっては国旗を汚損する行為は罪に値するとのことで、日本の文化ともいうべき「寄せ書き」が理解されないと諸外国から不信感を持たれるというケースもあります。

 

来年は終戦80年ということで、戦争を経験した方が少なくなる中、戦争をどう伝えるかということは様々な場面で受け継いでいかれなくてはならないと思います。国際紛争がやまない中、小学校にしろ中学校にしろ義務教育の場というのは、戦争の悲惨さというものを伝えていく場であってほしいと思います。

 

2024.7.5 伊豆新聞