コロナ禍の景気刺激策として推進された「GoToトラベル」。昨年度計上した7200億円が使いきれず、国庫に返納されることになるという。

 

このGoToが政策として浮かび上がったとき、果たして大丈夫なのかという疑問の声は多かった。感染が拡大していく中での景気刺激策。感染予防をしっかりしていれば旅行は大丈夫だという考えに、果たして大丈夫なのだろうかという心配の声はあった。しかし、一昨年秋には多くの観光地が賑わい一息つけたのは事実だ。

 

現に2021年の観光白書では国民の2/3がGoToを利用したという統計もでた。産業の乏しい地方ほど自然環境が豊かで、観光に力を入れている自治体は多い。よく言われるように観光産業はすそ野も広い。そこに重点的に予算を注入する考えは悪いことではないと思う。しかし一方では問題点も浮かび上がってきた。

 

まずこの新事業は、全国一斉スタートという点で混乱を巻き起こした。大きい施設も小さい施設もまずは登録を済ませねばならず、多くの施設がまずここでつまずいている。それも多くがホームページ上でのやり取りで、かなりのネット上級者でないとお手上げ状態だった。専門のスタッフでもいれば別だが、自営業者などはチンプンカンプンで参画をあきらめたところも多かったと思う。

 

やっとこさスタートラインにたどり着いたところで次の難関は行政の“マニュアル主義”。国がクーポン券を発行する関係で、現金に近い取り扱いが求められ注意文書も多発された。それでもクーポン券は不正使用が横行。大量に紛失する事態も発生した。さらに高級志向による小規模宿泊施設の悲哀。私のとこのようなペンションは・・・ぐすん。それでも多くの方にご利用くださいました。

 

それと役所のムダ使いは厳しく指摘しておかねばならない。もしこれでGoToが終わったとしたら、ホームページの構築から事務局の立ち上げ経費、各施設に送られてきた事務用品の数々、もちろん段ボール箱で届いたクーポン券も含めて、これをどう処分するのかということ。これらはすべて税でまかなわれている。今後事業が再開されないとすべてゴミだ。

 

一方で、「マイクロツーリズム」という新語に代表されるように、近場旅行が流行って各自治体がそれに合わせた事業を立ち上げたりもした。県境をまたいでの移動が制限されるようになり、近場旅行は今後も需要があると想定され、こういったところにGoToのクーポンを代用させるということは考えられると思う。ムダは極力避けなければならない。

 

また、全国に雨後の筍のようにワーケーション施設がつくられているが、新たな“箱モノ行政”の指摘は免れない。このようなワーケーション施設の利用促進に一定の補助金を出すのもいいかもしれない。これは、企業の地方進出の後押しをすることにもなろう。ついでに言うと、コロナで縮小した産官学連携の取り組みをMICEに再着眼して進めることも一つの手であろう。GoToのとらえ方もいろいろあっていいと思う。

 

※MICE・・・企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議 (Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を使った造語で、これらのビジネスイベントの総称。

 

【資料提供 静岡新聞】