定例会二日目は主に補正予算の質疑になりました。本予算で足りなくなったり逆に余ったりした予算を補正します。今定例会には一般会計で総額1億8千万の補正が組まれました。その質疑で私は3点の質問をしました。まず、繰越明許費についてです。(数字は約で表しています)

 

「繰越明許費」とは、本予算成立後のなんらかの理由で、その年度内に支出を終わらない見込があるものについて、議案説明会等で説明され問題がなければ補正予算の審議の時に議決をします。つまり、議会の議決を得て翌年度に繰り越して使用できるようにする予算のことを繰越明渠といいます。

※一方「債務負担行為」は最初から複数年度にわたるとして議決を求められるものです。(例:ごみの堆肥化事業で令和5年12月議会)

 

今回は土木費の道路橋りょう費5,340万円が翌年度に回されました。その中でも注目されるのが、あの白田川橋の撤去です。このうち工事費用の6割にあたる3,600万円が翌年度に繰り越されると説明されました。町当局はこれまで、今年11月に白田川橋の撤去を始めると公表していましたが、県土木事務所との協議で、その多くの工程を来年度に繰り越すことにしたということです。

 

 

この件については町民向けにもこれが初めての説明だったと思います。専門的にことは分からないこともあるのですが、かなり撤去に時間がかかることは確かで、橋の両側に撤去のための仮設工事を施し始めるとのこと。そして春から秋にかけての雨季を避け、翌年の11月頃の渇水期に本格的な撤去工事を行うとのことです。

 

 

これは大きな見込み違いで、地域住民にはしっかり説明しなければならない事案でしょう。ただでさえ「あの橋は危険です」と言っているのですから、それを放置しっぱなしということに対し、その対応を指摘しておかねばなりません。逆に来年の11月頃まで撤去がかかると考えると、撤去のままでいいのか、橋の架け替えを再考するのか、その議論が3月の町長選挙の争点として浮上することもあるでしょう。

 

もう一点、水産業費について触れておきます。いま、稲取漁港で大規模な工事が進められていますが、これは静岡県による漁港整備事業です。稲取漁港についてはかなり老朽化が進んでいますが、船揚げ場の改良や耐震耐津波対策を施し漁業者の就労改善に役立てる工事を行っています。

 

 

この工事が始まる年度に知事選挙があったのですが、鈴木知事が稲取に来られた際、私が案内し漁協関係者にもあっていただき稲取漁港の現状についてみてもらった経緯がありました。この工事の2割は地元負担ですが、極力地元負担が抑えられたと思っています。

 

かつて台風が逆走して伊豆半島の東海岸に大きな影響が出たことがありましたが、稲取で護岸が削られるなどの被害が出ました。その改良も行っていきます。この工事全体の工程は令和9年まで行われる予定ですが、ブランド金目鯛を水揚げする港にふさわしい漁港の改良をぜひ進めてほしいと思っています。

※市場や漁協の建屋、製氷機などすべて古く耐震基準を備えていません。これらの整備も進めていただければと私は思います。

 

そして一般質問でも質した観光費のインバウンド等対策事業補助金289万円についてはその内訳を尋ね、特に大きな部分「車両借上料」60万円について聞きました。これは1台30万の2台分で4日利用するとの説明でした。そんなにかかるのか疑問でしたが、運転手の雇料も含まれるとのこと。なお、この訪台ツアー事業には5万円が自己負担分として記されていました。

 

私だけでなく他の議員からも質疑があり、採決の段になって稲葉議員から予算案についての修正動議が出され、観光費の「雛のつるし飾りリブランディング事業委託料」と「インバウンド等対策事業補助金」については削除し、修正した補正予算案に全会一致で可決しました。また、これに付け加える形で、プレミアム商品券について付帯決議をし、さらに物価高対策の要望書も町長に提出しています。

 


※物価高騰・エネルギー高騰に対する迅速な対策を求める要望書

 

今回、議会の意思表示が動議や付帯決議、さらに要望として出されたことは、町長と議会が対等な立場で自治体運営を行う仕組み(二元代表制)を表現したといえます。この地方自治の仕組みは、国政の議員内閣制と異なり、相互に緊張関係を保ちつつ、当局の政策形成と執行の監視・評価を行うことができたという意味で意義があります。

 

よく地方議会は車の両輪といいますが、首長も議会も住民から直接選ばれるため、対等な立場で互いにチェックし合う「アクセルとブレーキ」のような関係を保ち、緊張感を持って運営されるのが理想と私は思います。これはギリシャの思想家ソクラテスから始まり、ドイツの哲学者ヘーゲルが確立した弁証法に通ずると言えます。これは単なる批判ではなく、将来を見据えた発展的な問題解決へ導くことになります。

※弁証法…対立する二つの概念を、議論を重ねることにより(正→反→合)より確かな結論に導く考え方。

 正論に対し反論をぶつけることによりより確かな結論へ導くことができます。

 

いずれにしても当局側と議会側がよい議論を重ね、町民にとって良い政治が展開できれば、地方議会は評価できると私は判断します。引き続き、議会の存在感を発揮していきたいと思います。