姉から携帯に電話。

その着信音がなるとビクッとする自分に気づく。

ああ、また頼みごとの連絡だなと
連鎖反応のように心の中で思ってしまう。

姉は一ヶ月に一回ぐらいの割で
私に電話とかけてきて
お菓子や洋服を送ってくれという。

転院したての頃は、もっとたくさんの種類があった。
下着、歯ブラシ、歯磨き粉、トリートメント
ファンデーション、口紅、などなど。

以前の病院は実家に近くて、父がこまめに行っていて
本人の要求するものはほとんど全部運んできたのだ。

転院して今の病院になって
父と母に変わって私が必需品を送るようになった。

   そう、そんな姉の病名は統合失調症だ。

妄想と幻聴に支配され、人格さえも壊れてしまう恐ろしい病だ。
時にはまるで悪人が乗り移ったかのように攻撃的になり
犯罪の一歩手前まで行ってしまう。
周りにいる人間はその病気の深い部分まで理解しない限り
どうすることもできず、動揺し、振り回される。


朝、連絡してきた姉の声は真に迫っていた。
要求したものをすぐにでも送って欲しいという内容だ。
「不要なものは浅草に送ったの?」という私に

「こないだななんが来た時に衣装ケース一つ分のものを
持って行ってしまったから、こまっているから
こっちからは送っていない、それよりお菓子と洋服を送ってよ」
と強い口調でまくし立てる、

ああ、具合が悪いんだな、と思った。

去年の年末の姉の誕生日に病院に会いに行った時
モノがあふれて整理ができないほどだったので
やむなく私が病室に入り、本人の承諾のもと
ものを整理して実家に送って保管しておくと
姉には説明して衣装ケース一つ分を処分したのだった。

それを姉はかなり根に持っているようだ。
それを処分してもまだモノはいっぱいだったのだけれどね。

私はこちらからお菓子や衣類を送るときは
その時点で使っていない持ち物を整理して
実家に送るなど減らしたら、その分だけ新しい物を
送るよと約束していたのだった。

遠い病院に姉を連れて行ってしまったのは私だ。
ある程度の姉の要求を聞いてあげないと
可愛そうだという気持ちと、わがままを通すたびに
周りの人に迷惑をかけてしまう悪循環に悩まされる。

姉の病気を知るということも大事だったけれど
姉の病気を受け入れいかに生きていくかという方が大事だった。

だってもう、姉はきっと完治しない、、、。
姉は病気に支配され、父や母のことも頭からない。

ただ姉を支配するのは、
持っているものがなくなってしまわないかということと
手に入れたいものを自分のものにするという物欲だけだ。


さあ、これから姉に送ろうと思うお菓子と
衣類をまとめよう、、、。

そんな姉からは
 頼んだものがついたよ、ありがとう  てきな
 そんな人間的な返事の帰ってくることはない。

そんな姉を治したいと言って一生懸命
頑張ってきた母の人生は
一体どんなものだったのだろう。

今日のダーのお弁$昨日の果てに、、、