天麩羅の想い出
病院の栄養士として勤め始めた頃
ひとつ上の先輩が
車でいろいろな所に連れて行ってくれた
車を持っていなかった私は
助手席に座るのが嬉しかった
栄養士の共通点か
先輩も私以上に
美味いものが好きだった
ある日
若松の天麩羅屋に
連れて行ってくれた
間口は狭く、
カウンターのみ
6席くらいだったろうか…
中に入ると
常連のようなおじ様達が
座っていて、
まだ20代そこそこの小娘には
場違いだった
その茶色いレトロな
小さな店は
老夫婦2人で切り盛りしていた
カウンターに立つ
職人気質の親父さんの
白衣と帽子が一段と白く見えた
2人でカウンターに座り
先輩が「おまかせで」
酒も飲まない客に
嫌な顔ひとつしないで
淡々と天麩羅を出してくれる
天麩羅屋など
行った事のない私は
盛り合わせていない
カウンターから
ひとつづつ出てくる天麩羅に
まず、驚いた
今では珍しくないが
塩で食べたりした
天麩羅で初めて食べた
うずら卵
紅生姜
梅干し
もちろん
烏賊も海老も鱧も美味しかった
ひとつづつ出てくる楽しさ
食べた後の余韻…
30年経った今でも
昨日のように想い出す
その一度だけしか
その店には行っていない
もちろん、
予約を取るのが難しい事もあったが
数年後
ネパールから帰国して
訪ねたときは
店自体が無くなっていた
風の便りで
先輩がお嫁に行った事も知った
そんな事を想い出しながら
天麩羅を揚げる
揚げ立ての天麩羅は美味しい
弁当の天麩羅は残念な味だが
仕方ない
残念な味を知っていればこそ、
美味しい味もまた格別というもの
言い訳をしながら
詰める母。
今日もお付き合い頂き
ありがとうございます!
素敵な1日を(^-^)/
