成年後見関係事件の概況(令和2年1月~令和2年12月)が公表されました。
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この概況で注目したいのは以下の点です。
①申立件数の停滞と保佐・補助の活用の進展
成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立件数は合計で37,235件(前年は35,959件)であり、対前年比約3.5%の増加となっています。
令和元年は対前年比約1.6%減少であったのに対し、令和2年は増加には転じたものの、微増に過ぎず、依然として停滞していると言えるでしょう。
以下のとおり、保佐・補助の活用が進んだのも今回の特徴と言えます。
○後見開始の審判の申立件数 対前年比約0.4%の減少
○保佐開始の審判の申立件数 対前年比約11.6%の増加
○補助開始の審判の申立件数 対前年比約30.7%の増加
②市区町村長申立てがトップに
とうとう市区町村長申立てがトップに。
申立人については、令和元年までは、本人の子が最も多かったですが、令和2年は市区町村長が最も多く全体の約23.9%を占め、次いで本人の子(約21.3%)、本人(約20.2%)の順となっています。
市区町村長申し立ては、対前年比約12.5%の増加です。
令和元年は対前年比約1.7%の増加だったので、飛躍的な増加といえるでしょう。
③鑑定実施割合がさらに低下
成年後見関係事件の終局事件のうち、鑑定を実施したものは、全体の約6.1%(前年は約7.0%)でした。
これは、本人情報シートが定着した効果なのでしょうか…いったいどこまで下がるのでしょう…。
④親族後見人の選任割合がさらに低下
配偶者、親、子、兄弟姉妹及びその他親族が成年後見人等に選任されたものが全体の約19.7%(前年は約21.8%)となっています。
これは、市区町村長申立てが増えたこともその要因と思われます。
⑤司法書士の選任数が依然としてトップ
第三者後見人の選任数
親族以外の後見人等29,522件(前年27,941件)
内訳
弁護士 7,731件(前年 7,768件)
司法書士 11,184件(前年10,542件)
社会福祉士 5,437件(前年 5,134件)
市民後見人 311件(前年 296件)
⑥監督人の統計の初公表
今回、初めて監督人の統計が公表されました。
認容で終局した後見開始、保佐開始及び補助開始事件(34,520件) のうち、成年後見監督人等(成年後見監督人、保佐監督人及び補助監督人) が選任されたものは1,138件であり、全体の約3.3%(前年は約3.2%)でした。
監督人の選任数は弁護士が一番多いようです。
これは、おそらく、弁護士の監督人には弁護士が選任されるのに対し、司法書士の監督人にはリーガルサポートが法人として監督人になるためと思われます。
(合 計) 1,138件(前年1,054件)
弁護士 503件(前年458件)
司法書士 490件(前年462件)
社会福祉士 10件(前年9件)
社会福祉協議会 102件(前年100件)
税理士 3件(前年0件)
その他 30件(前年25件)
今回の「成年後見関係事件の概況」においては、保佐・補助の活用や市区町村長申立ての増加など、成年後見制度の利用促進が少しではありますが数字に表れてきたような印象を受けました。
(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
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