大阪弁護士会会報において、2017年5月号から、大阪家庭裁判所家事第4部後見係(大阪家裁後見センター)による「大阪家裁後見センターだより」という連載が2~3か月に1回のペースで掲載されています。
内容は、日頃後見人等から寄せられる質問への回答、後見等事務を行ううえで配慮すべき事項等を紹介していて、後見実務に携わる人にとっては、とても参考になるものになっています。
連載第9回は2018年10月号に掲載されました。
連載第9回の内容は、「任意後見契約の有効性」がテーマです。
任意後見契約のうち、いわゆる「即効型」(任意後見契約の直後に契約の効力を発生させる場合)においては、契約締結時点において、本人の判断能力が一定程度低下しているため、本人の意思能力や契約意思が欠けるとして、任意後見契約の有効性が問題になることがあります。
任意後見のメリットは、自分で契約内容(誰を後見人にするか、どのような代理権を与えるか、報酬をいくらにするか等)を決められるところにあります。
自分で契約内容を決める前提として、契約内容を理解できるだけの能力が必要になります。
判断能力がしっかりしている時に、将来に備えて契約を締結するのが原則です。
私なら、もし「即効型」の任意後見契約の依頼が来たら、法定後見制度の利用を勧めると思いますが…。
ただ、本人が任意後見契約の締結を望んでいるのであるなら、その意思を尊重すべきですし、悩ましいところです。
「即効型」のように任意後見契約の有効性が後から問題になる可能性がある場合は、契約を締結する際に、医療記録や介護認定の資料等に基づいて、本人の意思能力や契約意思について慎重に判断する必要があります。また、契約締結に至る過程についても記録しておく必要があるでしょう。
この連載第9回においては、任意後見契約の有効性が争われた事件として次の2つ裁判例が紹介されています。
1 東京地裁判決平成18年7月6日・判時1965号44頁
2 大阪高裁決定平成24年9月6日・家月65巻84頁
いずれも、親族間紛争の事件です。
裁判所が本人の意思能力や契約意思をどのように事実認定するのかを知ることができる貴重な裁判例です。
裁判例の内容の詳細については、「大阪家裁後見センターだより」をご覧ください。
(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
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