WEDGE「成年後見制度の影と光」 | 成年後見日記

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「WEDGE」の「成年後見制度の影と光」というシリーズ記事がネットで公開されています。

 

(PART1)家裁に「左遷」された成年後見人⇒コチラ

(PART2)成年後見パートナー弁護士との泥沼関係⇒コチラ

(PART3)是正される「専門職」に偏重した成年後見人⇒コチラ

 

従来から、後見制度や専門職に対するネガティブキャンペーンを行うだけの記事が雑誌に掲載されることがありましたが、この「成年後見制度の影と光」は、それらの「後見制度批判ビジネス」の記事とは一線を画するものです。

 

この記事は、とある親族後見人が、家庭裁判所から財産管理が不適切だということで事務分掌により財産管理権を持つ弁護士との複数後見になった事例を取材し、後見制度の問題点を指摘しています。

 

なかでも、後見制度における「財産管理の硬直性」という問題点は、私も専門職後見人として常々やりづらさを感じていた点です。

 

家計のなかで、持ちつ持たれつ生活していた人の個人の財産を家計から切り取って、他人である専門職後見人がいきなり財産管理を始める…

 

専門職後見人の立場からすると、「被後見人の財産は本人のために使う」というのが原則ですから、本人と家族との財産を峻別し、本人の財産を管理していくことになります。

 

でも、これでは、時に家族との軋轢を生みますし、本当に本人はそんなことを望んでいるのであろうか…という疑念も湧いてきます。

 

こうした問題点に対する対応策として、近年、「家族信託」が提唱されており、今年はテレビ番組でも紹介されて話題となりました。

 

この記事は、親族後見人の視点から、こうした後見制度における「財産管理の硬直性」の問題点を指摘し、「国民の家計に安易に弁護士や司法書士などを介入させるのは禁物である。」と家庭裁判所を痛烈に批判しています。

 

この記事がいわゆる「後見制度批判ビジネス」の記事と一線を画するのは、単なる批判に終わらずに、著者なりの本件における解決策を提示するとともに、最高裁事務総局家庭局にインタビューを実施し、問題点をぶつけている点にあります。

 

専門職後見人が多い現状について、第二課長の宇田川氏が「…裁判所として、基本計画を踏まえ、まず身近な人、親族などに後見人になっていただくか、もしくはその地域の人に市民後見人として関与していただくということが望ましいと考えている。」と述べています。

 

確かに、本人の意思決定を支援するのが後見人の役割ですので、本人のことを良く知っていて、本人のことを愛している家族・親族がいれば、その家族・親族が後見人として適任だと思います。

そして、その後見人・本人を支援する体制の構築が必要となるのはインタビューでも述べられているとおりです。

 

著者は、最高裁事務総局家庭局のインタビューについて、「成年後見制度の改革基調を印象付ける発言」としつつ、「今後の推移を国民目線で検証し続ける必要がある」としています。

 

私も専門職として、変わっていく成年後見制度の運用の中で、今後どのような役割を果たすべきかについて真摯に考えたいと思います。

 

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