今日は成年後見の横領事件で注目の判決がありました。
【成年後見で1億円着服、弁護士に懲役6年 東京地裁】
成年後見人として管理していた女性3人の口座から計約1億円を着服したとして業務上横領罪に問われた元弁護士、渡部直樹被告(49)の判決公判が7日、東京地裁であった。稗田雅洋裁判官は懲役6年(求刑懲役7年)を言い渡した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG07H3K_X01C16A0CC0000/
この事件が発覚した頃から、資産多額(流動資産5000万円以上)の場合には弁護士の後見人に弁護士の監督人が選任されるようになりました。
「専門職の後見人はそれぞれの所属団体でちゃんと監督してよ!専門職でしょ?」という家庭裁判所の悲鳴が聞こえてきそうですよね…。
もちろん司法書士も他人事ではありません。
今回の実刑判決は今後の後見人の横領事件発生の抑止力にはなるかと思いますが、被害者が真に望んでいるのは刑罰よりも被害額の賠償ではないでしょうか。
この賠償については一足先に民事訴訟の判決が出ています。
http://www.asahi.com/articles/ASJ995VX3J99UTIL05D.html
この記事によると被害女性の請求通り渡部元弁護士に7900万円の支払いを命じたとあります。
ただ、渡部元弁護士に賠償できるお金があるとは思えませんし(あればこんな訴訟は提起されないはず)、しかも刑事裁判の判決が確定したら、ますます賠償の実現は遠のきます。
ですから、被害女性側は、後見人を選任した家裁にも責任があるとして、国に損害賠償を求め提訴しているそうです。
もし国家賠償請求が認められたら、税金で被害額を賠償することになります。
今日の判決で、裁判官は「被後見人らを裏切り、成年後見制度に対する信頼も揺るがしかねない」と指摘したそうですが、もし今後もこんな事件が続いて税金で被害額を填補することになれば、国民の成年後見制度に対する信頼なんて望むべくもありません。
専門職後見人の成年後見制度の担い手としての自覚が問われる判決といえるでしょう。
(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
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