ベスト・インタレスト(最善の利益)の罠① | 成年後見日記

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ベスト・インタレスト(best interests)という言葉をご存じですか?

 

日本語では「最善の利益」と訳されています。

 

成年後見に興味のある方は、「後見人は常に被後見人のベスト・インタレストを追求しなければならない」と聞いたことがあるのではないでしょうか?

 

私も、「後見人は常に被後見人のベスト・インタレストを追求しなければならない」と思っていました。

 

でも、これは勘違いだったようです。

 

私は中央大学の大学院で特殊講義「高齢社会と成年後見制度」新井誠教授)の講座を受講していますが、その講座で「イギリスの成年後見制度」を勉強したときに、その勘違いに気が付きました。

 

ベスト・インタレストとは、イギリス法から来た概念です。

 

イギリス法の2005年『意思決定能力法』の原則のひとつに「ベスト・インタレストの原則」というのがあります。

 

「ベスト・インタレストの原則」とは「意思決定能力がない(と法的に判断された)本人に代わって行為し、あるいは、意思決定をするにあたっては本人のベスト・インタレストに適うように行わなければならない。」(成年後見法制の展望p94)という原則です。

 

では、どういう場合に「意思決定能力がない」と法的に判断されるかというと、「本人自身による決定を行うべく可能な限りの支援を受けたうえで、それが功を奏しなかった場合のみ、意思決定ができない」とされています(同上)。

 

典型的な例として、本人が植物状態にある場合があげられています(同 p.90)

 

つまり、ベスト・インタレストを追求するのは、このように限定された場合なんですね。


本人の意思決定を支援するためには、客観的なベスト・インタレストを追求するよりも、まずは本人の意思と選好(will and preference)を知り、尊重する姿勢が大切になってきます。

 

「ベスト・インタレスト、ベスト・インタレスト…」と念仏のように唱えて後見業務を行っていると、本人の意思を見失い、後見人の価値観を本人に押し付けるということにもなりかねません。

 

私も後見業務に携わる一人として、ベスト・インタレストの罠に陥って本人を見失わないように、気を付けたいものです。

 

私がベスト・インタレストの罠に陥った経験談については、また後日。

 


 

(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
 

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