「任意後見制度」という言葉を聞いたことはありますか?
「任意後見制度」とは、自分が認知症など判断能力が衰えた場合に備えて、後見人をあらかじめ自分で選んでおくという制度です。
自分の信頼する人に将来後見人になってもらえますし、その人にやってもらいたいことを「任意後見契約」で決めておくことができます。
こう書くと、「任意後見制度」はとてもいい制度のようにも思えますが、この制度の利用はなかなか広まりません。
平成26年12月における任意後見利用者はわずか2,119人にすぎません。
法定後見(後見・保佐・補助)の利用者が約18万人であることに比べると、いかに任意後見の利用者が少ないかがわかります(成年後見関係事件の概況平成26年1月~12月)
では、なぜ任意後見制度は利用されないのでしょうか?
これについて、弁護士の赤沼康弘先生は、「任意後見契約活用の工夫と課題」(月報司法書士2015年12月号)において、次のように述べられています。
「その原因としては、
わが国が契約社会として未成熟であることや
未だ制度が周知されていないこと、
生活・療養看護及び財産管理に関する法律行為に限定されていること、
さらに適切な任意後見受任者の情報がないことなど
があげられるであろう。」
私は、これに加えて
「将来、自分が認知症になるとは考えたくないし、
認知症になるかどうかもわからない不確実な将来に備える気にならない」
人が多いからではないかと思います。
しかし、日本では、65歳以上の認知症の人は462万人いますし、
2025年には700万人に達すると言われています。
平成28年1月16日の朝日新聞に興味深い記事がありました。
読者に「自分も認知症になると思う?」というアンケートを行ったところ、
なんと75%の人が「自分もなるかもしれない」と答えたというのです。
「自分が将来認知症になるかもしれない」という不安を持っている人自体はたくさんいるのです。
任意後見制度の潜在的なニーズはあるといえるでしょう。
そういった方達に、任意後見制度をわかりやすく説明し、制度を使いやすいようにお手伝いするのが、私達司法書士の役割だと思います。
(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
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