『 6 + 9 = 15 』~平和のために~ | 一寸笑閑話

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日常のなかの、考えや、思いつきを書き散らしています。


証券会社に就職した私の、『営業』で初めて顧客になってくださったのは、支店から ほど近い、骨董品店のおじいさん(笑)でした。

『柳盛堂』という、古美術商人で、全国各地をまわって集めたという、自慢(?)の品々が、天井まで うずたかく積まれ、ビミョーなバランスで かろうじて陳列されていました。

ブランドの『CHANEL(シャネル)』が大好きで、いつも、支店の開店と同時に、

「よう、まみ、おはよう。みなさんも、おはよう。」

と、サングラスに帽子姿で、自転車に乗ってやってくるのでした。

「おれには、妹がいたんだけどね、戦争のとき、空襲で死んじまった。背中に担いで逃げてたんだが、背中が だんだん重くなってな。…どこへ逃げていいかもわからず、そこらへんを走って逃げ回った…。気がついたら、妹が、背中で死んでた。」

8月になると、ポツリポツリと、戦争体験を話してくれるのでした。
支店に来る姿は、颯爽とした様子ですが、私が『柳盛堂』に行くと、昔語りになりました。

「まみ、おれは あと6年、生きられたらいいなあと思う。そしたら、80歳だ。」

なに言ってんですか、と、毎回言ったものでしたが、そのとおりになってしまいました…。

「まみよ、せっかく生まれてきたんだ、楽な人生じゃ、つまらねえぞ。山あり谷ありな、おれみたいなスリリングな人生がいいぞ」

口癖のように、私に言ったものでした。
私は彼のことを思い出すとき、1枚の写真が頭によぎります。

『焼き場に立つ少年』。

みなさんも、ご覧になったこと、あるかと思います。
有名な写真ですしね。

あれが、柳盛堂のご主人と、重なってしまうんですね、イメージが…(>_<)。

昨日は 8月9日、原爆が長崎に落とされた日です。
原爆は知っていても、広島と長崎とで ごちゃ混ぜな記憶の人、けっこういるんですね、若い世代に…。

私が たまに出入りしてる、このアメーバアプリの「テルミー」という質問サイトのなかに、

『広島原爆と、長崎原爆と、終戦記念日を正しく覚えてる人、いますか?』

というのが、先日、ありました。
珍しい質問もあるもんだ、と思いながらも「yes」にクリックすると、意外にも、あやふやな人、いました…。

『6日の広島と、9日の長崎とで、15日の終戦記念日』。

それを、数式であらわしたものが、冒頭のタイトル、

『 6 + 9 = 15』

というわけですが、これを、私はコメントとして書き込みしました。

私は41歳になりましたが、私たちの世代くらいまでは、覚えるまでもなく、おじいちゃんやおばあちゃんから語り継がれてきた「記憶」として、頭に残っています。
ですから、“ 覚える ” というものではなかったんですね。

直接体験はしてないけど、あまりに近すぎて、リアルな記憶…。

焦土と化した広島や長崎の街を、当時の進駐兵士たちは、『グラウンド・ゼロ』と呼んでいました。

『なにもない、振り出しの土地』。

せまい地球のどこかで、今もつねに戦争が行われ、かつて日本がたどった運命や、内戦で人が大勢亡くなったことなど、世界はすぐに忘れてしまうかのようです。
キング牧師や、ビートルズ、ガンジーやマザー・テレサの名前は有名なのに、彼らの願いが完全に根付くことはありません。

聖書に手を重ね、就任宣言を行う大統領も、聖戦(ジハード)を声高に叫ぶ指導者も、少年時代があったであろうに、彼らの学んだことが、生かされない社会というのが、なんとも悲しいですね…。
何を夢見て国のトップになったのか、さっぱりわかりません。
私には、サッカーを通して内戦停止を呼びかけた、コートジボワールのドログバ選手のほうが、よっぽど崇高だと思います。


先の国会で、『集団的自衛権』が話題になりましたね。
発端をご存知の方も、きっとそんなに多くないと思います。

「…ロシアのバルチック艦隊が、日本を攻撃するために出港したことを無線で知った日本海軍。
東郷平八郎提督は、これを迎撃・阻止せよ、との指令を受けて、洋上にて迎撃、見事にバルチック艦隊を撃破した。
さて、ここで問題がある。
バルチック艦隊を撃破した東郷平八郎は、現在の法律にあてはめると、犯罪者となってしまいます。
今後、このような事例が発生した場合、日本は敵艦隊が日本に最初の一弾を浴びせるまで、手が出せない、というのが、現行法です。
内閣は、これをどのように考えるのか?…」

けっこう、衝撃に近い質問だったんですが、世間の関心は、すぐに別な観点に移動してしまいました。

『自衛隊を戦闘に駆り出すのか?』
『憲法解釈を変えるのか?』
『アメリカの手先になるのか?』
『また、戦争をする気なのか?』
『敵国ってどこだ?』
『日本に攻めてくる国なんか、あるのか?』

………

挙げたら、キリありませんが、問題がすり替えられてしまっています。
なまじ、世界でもほぼ最高水準の装備と組織を持ったから、そんなふうに余計な問題が出てきてしまうのでしょうか…。

8月に限らず(8月は特に、ですが…)、『ヒロシマ』『ナガサキ』を経験した国として、考えなきゃいけないことです。
アメリカも、核を使用した国として、考えなきゃいけない。
当事国以外の国も、アインシュタインの嘆きに、ノーベルの祈りに、もっと耳を傾けるべきだと思っています。

夢見たものは、なんだったのか、思い出して欲しいな、と思いました。



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