audiobookにて。

おいしいごはんが食べられますように

Amazon（アマゾン）

594〜3,850円

7/10

”みんながみんな自分がしたいことだけ。無理なくできることだけ。心地いいことだけを選んで生きてうまく行くわけがない。したくないことも誰かがしないと。しんどくても誰かがしないと。仕事は回らない。仕事が回らなかったら会社はつぶれる。そんな会社はつぶれたらいい、というのは思考停止が過ぎる”

”ごはん面倒くさいって言うと、なんか幼稚だって思われるような気がしない？美味しいって言って、何でも食べる人の方が大人として、人間として成熟してるって見なされるように思う”

”男の子なんだからいっぱい食べないと。急にそんな言葉が頭に浮かぶ。年上の女の人の声だった。母の声とも祖母の声とも似ているし、原田さんとか、昔の担任の先生とか、知り合いの中年女性の声の詰め合わせみたいな感じもした。大盛りのラーメンをみんな全部食べ切って汁まで飲んでいたけど、俺は別に。あんな沢山食べるのは好きじゃなかったんだった。でもこんなに食べたくないとは言えなかった”

（audiobookから割愛。句読点、漢字変換など違いあるかもしれません）

◆◇◆◇◆

タイトルとイラストからして、ほのぼの系のお話かと思ったら、普通にホラーでした。。怖かったというのもありますが、これを読んで思い知らされたのは「食への思い」は人それぞれ。みんなが食事を好きなわけでもないし、こだわりがあるわけでもない。

今の時代は、健康志向の食事や「食べることの大切さ」みたいな価値観が大きく推奨される世の中が当たり前になってきているけど、この本はまるで逆行した思いを抱いた人の物語であり、食事に対する思いを押し付けられることの苦しさみたいなものが切実に伝わってきました。

まあ生き方自体の我慢を重ねた結果、自分を健康的な方へと導くことを諦めてしまったのではないか、という読み方もできるわけですが、ある意味で説得力のあるニヒリズムを味わえたことが怖くもあり、学びともなった本です。登場人物の中でいたって「まとも」とされる人たちの概念が、壁紙がヒリヒリと剝がされる感覚を体験してもらえますように。

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～おいしいごはんが食べられますように～思いのほかホラーだった。。