- 前ページ
- 次ページ
昨夜から3日連続でのコンサートの仕事。
ワルシャワ旧市街は
週末ということもあってか
土曜日の今日は散歩や観光する人々で
とても賑わっていた。
最近のワルシャワはお天気も良く
吹き抜ける風も春らしくて
とても心地良い。
街ゆく人の服装も
薄い上着を羽織る程度で
日中は半袖の人もいる。
旬の野菜や果物が店先に彩りよく並び出し
街路樹は新緑やお花で色づき始め
ポーランドが華やぎ出す
最高の季節の到来だ。


今夜のコンサートも満員御礼だった。
ショパンの音楽を軸に
共に過ごせることへの感謝と
たくさんの笑顔と嬉しい言葉を頂く幸せ。
聞けば明日もまた大入りらしい。
スペインからの団体ツーリストふた組の
予約が入っているそうだ。
ポーランドが華やぐ季節到来と同時に
我がショパンコンサートも活気付く。
本当に有り難い。
来週も半ばに一つと
あとゴールデンウィークも
3日連続で入っているので
2週間のうちの半分は
舞台に立ってショパンを弾くことになる。
コンサートの仕事が立て込んでくる時に
私自身とても注意していることが
いかに鮮度を保つかということだ。
ここでの鮮度を保つというのは
演奏の鮮度というよりもむしろ
自分の思考の鮮度だ。
連日コンサートという時は特に
毎日思考をリセットするというか
初期化することを心掛けている。
思考を開放しリスタートすることで
結果的に演奏内容にも繋がってくる。
何度も弾いた作品であっても
この思考の初期化を導入すると
全く違った角度から
作品と向き合うことができるし
ましてその日の感覚や
インスピレーションを
取り入れやすくなる。
もちろんそれに伴う日々の練習方法も
鮮度を保つことに寄せながら
思考を凝らすことになるわけだが。

今日のコンサートの帰り道、
夜風にあたりながら
ポーランドの春の匂いを感じながら
今自分がこうして
ここにいることの幸せを感じた。
3歳からピアノを始めて
そのピアノで今こうして
仕事をすることができて
ショパンが生まれたポーランド
という国で
ショパンを弾いている、
このことは当たり前でもなんでもなく
その一つ一つが
奇跡の連続なんだと思う。
それだけでなく
いまこうして歩いていること、
帰る家があること、
食べるものがあって健康で...
そうやって突き詰めていくと
とてつもなく思考が広がる。
例えば
朝目覚めたときに
ベッドから起き上がれること、
ちゃんと美味しいと感じて
食事が取れること、
お風呂に入ればちゃんとシャワーから
熱いお湯が出ること...
日常の何でもない当たり前のことは
決して当たり前ではないのかもしれない、
そんな風に考えると
全てのことの奇跡に
感謝の気持ちが
自然と湧き上がる。

私が最近こんな風に考えるのは
もしかしたら
人生の折り返し地点を通り越し
すでに後半戦を生きているからなのか、
もしかしたら
数か月前に父親という
とても身近な肉親を亡くし
《死》というものをより現実的に
捉えるようになったからなのか、
それはわからない。
ただ、全てのことが当たり前ではないと
感覚的にでも捉えることができたなら
より自分のことを
丁寧に扱えるようになる。
常に心と体の声を聞いて
もし悲鳴を上げていたら無理せず労り、
常にメンテナンスを心掛け、
少しでも良いものを
体に摂取しようという姿勢になる。

そして過去や未来に振り回されることなく
今ここにある物事に全神経を集中する。
過ぎ去ったものを悔やむことや
まだ訪れてもいないものに対する不安は
今私が一番排除したい項目だ。
そんなことを考えながら
また明日もショパンと向き合う。