「J.F.ゴーター氏、水彩画展」
の案内状。
古い家屋の水彩画。
丁寧に手書きで私の名が書かれてあり、
「友人の個展です、お時間がありましたら・・・」
これも几帳面そうな字で添え書きが。
ギャラリーからではない、
見覚えのない字。
差出人不明。
自分の名を書き忘れたのだな。
ままあることです。
でもなんだか、なぜか、気になる。
ペンを紙から離さずきちんと一画一画運んだ小さめの字が
この差出人の人柄を思わせます。
雑に数出されたわけではない案内状。
「誰だろ?」
春の気配のぽやんとした空気の中
夜道を首を傾げながら帰ってきました。
どうってことないのです。
よくあること。
ですが
「よくあること」をこんなとこに書かせる、思わせる、なにか。
言いおおせない、なにか。
こういうものが人の情感を動かす小さな端緒であろうか、と
思ったことでした。
稲垣足穂の「一千一秒物語」が読みたくなりました。
どこへやったかなぁ。
「starlight cigar」
、だったっけ?
点けるときっとこんな色で薫るシガーに違いない、
今日の字の色は私の「一千一秒物語」のイメージの色。