♪お前が二十歳になったら、酒でも一緒に飲みたいものだ♪
・・・残念ながら二人とも酒が飲めない・・・。
成人式を迎えた息子。
我家の成人式は・・・昨年末の「つくばマラソン」だったな。
スタートしたであろう時間から1時間半。
中間地点の折り返し、沢山の観客に交じって探した。
次から次へとランナーが来る。
一人の顔も見逃すまいと・・・目が回りそう。
見逃したかと走り去る背中にも、見慣れた背中、容姿が無いか。
「走る服装、聞いとけば良かった」「この塊から見つけるのは大変だ」
「こりや見つけるの無理だわ」「もう行っちゃたかな?」
口々に観衆のなげきの言葉。
他人のランナーにも「ガンバレ!」と声を発するが気持ちは漫ろ。
顔面認識システムのように次から次へと視点合わせては次へ。
応援に来た家族は3人、目は6つ。
愛する家族の顔見逃すはずは無い!。
・・・・「大!!」
他に言葉が出ない・・・サングラスをしてて良かった。
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平成2年、家内のお腹に宿った生命は。
「このままでは流産します」と医師に宣告された。
「胎児はまだ800g、今出たら育ちません」
即刻入院、安静、出産予定日6ヶ月前だった。
「大丈夫、「大」は強い子だから」・・・きっとそのはず・・・。
家内の腹に宿った翌日から「その子の名前は「大」」と決めた。
「大きな夢と大きな希望、大きな体と大きな心、そして大きな愛を持て」と。
何度もの危機を乗り越えて、平成2年10月18日の朝
予定日に無事に誕生した。
家内と二人、「大ちゃん凄いね・・・」
喜びもひとしおの瞬間。
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そして。。。20年。。。ある日。。。
電話の向こうで
「俺、気持ちが弱いじゃん。・・・だから自分の根性試しと
二十歳の記念にフルマラソン挑戦してみようと思うんだ」
「完走出来れば、何かが変わりそうな気がするんだ」
「自分との戦い」
・・・「そう、やって見れば」・・・。
嬉しかった・・・突然の言葉、気持ちが。
男として人として「真の成人」になろうとしている息子の成長が。。。
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軽く手を上げ軽快に走り去る背中。。。
大きく見えた、とてつもなく・・・。
追い付くはずは無いけど、「頑張れ!」とゴールまで付いて行きたかった。
ただ、人知れず目に一杯の涙を貯めて
平静を装い見送った。
観衆から「良く見つけましたね~」
・・・・・「はい!親ですから!」
車を飛ばして帰宅。
自分の部屋で連絡を待った。
・・・そろそろゴールをする時間だけどな~・・・・。
「完走したよ。3時間半切りたかったけど・・・」
・・・「・・・・・。」
「30キロすぎで足がつっちゃってさあ~」
・・・「・・・・・。」
「応援に来てくれてありがとう」
「来てると思わなかったから嬉しかったよ」
・・・「・・・・・。」
「・・・・。」
・・・「・・・・・。」
「ありがとうね」声が震えてる。
・・・「・・・うん・・・。」
・・・「凄いな・・・凄いよ・・・」
「・・・うん・・・。」
家内に報告、発する言葉は「大、凄いね・・・」
「ひとしお」の時間をまた貰った。