好投手揃いの福島県で、最もプロのスカウトから注目を浴びているのが光南の佐藤
勇だ。彼の将来性を探るために福島で彼の投球を見る事が出来た。9回被安打10 四
死球2 奪三振12 失点4。彼の長所・欠点を大まかに理解出来る内容だった。

(投球内容)
ストレート マックス140キロ前半ほど
常時135キロ~140キロほど
スラーブ
スライダー
フォーク
 彼の立ち上がり。それほどボールは走っていなかった。恐らく135キロ前後。だが
尻上がりに腕が振れるようになり、しっかりと指先に力が伝わった時のストレート
は確かに素晴らしいものがあった。スピードとしては140キロ前後を計測してお
り、ドラフト候補と値するほどの威力あるボールであっただろう。球質は球威
型。手元で詰まらせて打たせて取っている。ただ細かなコントロールに欠いてお
り、高めへ浮くストレートが多く、郡山打線は逃さず10安打を浴びてしまった。い
ずれにしろストレートの球威に依存する投手で、きめ細かい投球が出来る投手では
ない。

 変化球はスライダー、フォーク、スラーブの3球種。スライダーは曲がりが大き
く、曲がりが大きすぎて、打者の膝にぶつかるほど。しかし変化球は曲がりの大き
さを競っているわけではなく、打者を打たせて取るために使うものだ。彼のスライ
ダーは並みの高校生左腕に比べて切れが素晴らしいのは否定しない。だが彼がこの
スライダーを自分なりに制御して使いこなすことが出来ているか。その辺が気に
なった。

 スライダーよりもフォークを上手く使いこなすことが出来ている。打者の手元で
急激に落ちており、面白いように空振りが奪うことが出来ていた。このフォークを
上のステージでも使えるようになるとさらに奪三振率が高まっていきそうだ。

(配球)

 右打者には懐を抉ることを主眼に置いたピッチング。追い込んでからは特に内角
のストレート、膝もとへスライダーで三振を狙う配球だ。左打者には外角中心にス
トレート、スライダーでカウントを稼ぎ、追い込んでからは、外角スライ
ダー、フォークで空振り三振を狙う配球。

 彼の悪い所は強引な攻めをする傾向があり、強引にストレートを投げて打たせて
取ろうとすると高めに抜けて痛打されるシーンを見た。それもピンチの場面で、強
引な攻めをしている。勝負所の投球センスを欠く。良く言えば強気な投球ともいえ
るが、それも打者に打たれやすいコースに行ってしまえば、強気さが欠点になる。

 クイックは1.2秒前後のクイック、足上げでそのまま投げる。この2パターン。ラ
ンナーなしでも、ランナーありでも、それほど制球力に差はない。牽制は偶に鋭い
牽制を入れている。フィールディングの動きについては詳しくは分からなかった。

(投球フォーム)

 ノーワインドアップから始動する。右足を一本足で引きあげて 左足は軸足に
しっかりと体重を乗せて立つ事が出来ている。重心の位置がしっかりとしてい
る、右足を二塁方向へ送りこんでいきながら、重心を少しずつ下げていき、軸足を
捕手方向へ折り曲げて、スパイクをプレートにしっかりと押さえ付け、踏み込み足
もつま先を一塁方向へ向いたまま着地している。それによって踏み込み足の膝の開
きが抑えられ、重心移動も安定する。右腕のグラブを斜めにぐっと伸ばして、開き
を抑える事が出来ている。

 軸足の使い方、踏み込んだ足によって外側の開きを抑える事が出来ており、重心
移動は真っすぐ向いている。ただ残念なのはテークバックをして、回旋に入り、加
速する時に、左肘が下がってしまうこと。この使い方では左肘に負担をかけやすく
故障の可能性も否めない。彼はこの肘の位置から、鋭く振り下ろす事が出来ている
ため威力あるストレートを投げられていると考える。一番気になったのは肘の使い
方。左肩はやや下げて、胸郭を上手く使う事が出来るようになるともっとストレー
トの角度は出ていくだろう。

将来の可能性
 ストレートの威力、スライダー、フォークの精度は高校生としては高いレベルに
満たしており、勝負所の制球力に欠ける投手だが、相対的に見て、今年の左腕では
志望届を提出すれば、指名される投手の一人ではないだろうか。

 まだ課題は多く、特に勝負所の制球力の甘さが大きな課題。高めに浮く原因は
フォームも関連しているので、そこを直さなければ次のステージで長く活躍するこ
とは出来ない。高卒プロ入りしたと想定して場合、一軍で台頭するまでは3,4年は
かかると見込んだ方がいいだろう。

 大学・社会人を経由する場合でも、腰を据えて教えられる環境の下で恵まれた才
能を花開かせて欲しい投手。