くりまみのブログ

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ASKAさんの歌声に魅せられ続けております♪

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   安西涼子はウィーン行きの機内にいた。
日常のしがらみから解放され、大勢の見ず知らずの人の中でくつろいでいた。
年末年始の休暇を利用しての一人旅だ。
日常のしがらみ…一つは仕事だ。
大手電子機器メーカーの工場で、もう長く勤めている。
役職は係長。生産台数の目標、クオリティの追求、上司や部下との軋轢など、ストレスの多い職場だ。
   そしてもう一つが家族だ。
それは涼子にとってとても大切なものだったが、家事と仕事に追われ日々を回していくのに精一杯で、夫や姑、高校生になった二人の子供達とうまく向き合えているのか不安を感じていた。
  そういうものを一切放り出して、旅に出た。一週間ほどではあるが、涼子は開放感に浸りながら座席で眠っていた。
   どれくらい眠っていただろう…涼子は機内アナウンスで目が覚めた。
「ウィーン国際空港は現在大雪で、予定通りの時刻に着陸出来ません。しばらく上空を旋回します」
英語、ドイツ語の後、日本語でアナウンスされた。ブランケットを掛け直し、
「この冬はヨーロッパも寒いのかな」
とつぶやくと、涼子はまたうつらうつらとなった。するとまたアナウンス。
「ウィーンではなく、グラーツに着陸します」
「えぇ!」
涼子は今度こそしっかりと起きて、日本人CAを探し、
「どういうこと?」
と聞いた。
「ウィーンから南に百五十キロほど離れたグラーツにあるターラーホーフ空港に着陸し、お客様にはそのまま機内待機してもらいます。天候が回復し、除雪作業などの空港整備が済めば着陸許可が出ますので、そうなればまたウィーンに向かいます」
「ということは、ウィーンに何時に着くかは?」
「わかりません」
「ふぅ…」
涼子は機内装着の電話を借り、そろそろウィーンの空港で待っているだろう麻里子に、何時になっても自力で行くので空港で待たなくてよい旨の知らせを入れた。

   涼子は、ぼんやりと麻里子のことを思い出していた。
麻里子はウィーンでオーストリア人の夫と一緒に小さなホテルを経営している。
「私が高卒で働き始めたころ、麻里子は音大に進んだんだよなあ。卒業したらすぐウィーンだもん、すごいよなあ」
バイオリン奏者を目指してウィーンに行ってしまってもう二十年になる。
麻里子もホテルはヨーロッパらしいたたずまいでなかなか素敵だと、人づてに聞いた。特に音楽好きな旅行者に人気らしい。
宿泊予約のため日本から電話すると、
「わぁ、久しぶりだね。いいよ、いいよ。いい部屋ちゃんと確保しておくからね。うちのホテル、とっても小さくて外から分かりづらいから空港まで迎えに行くわね。何時着?」
と言っていた。それが飛行機の遅延で自力で行くはめになってしまった。
「大丈夫かな…」
とやはり少し不安になる。
待機時間涼子は、オーストリアのガイドブックをもう一度読んで過ごした。麻里子のホテルについては何の記載もないので携帯電話の住所録から、麻里子のホテルの住所と電話番号を紙に抜き出しておいた。

                                                  つづく